たった976gの「アイオロス XXX チューブラー」で裏筑波を走ってみた
軽量と聞くとそれが何であれ気になってしまうのがロード乗りの性。特にヒルクライムをする方ならばなおさらでしょう。自分の体重はさておき、機材で能力アップができるのは自転車のいいところ。そんな自転車のパーツの中で、見た目の多くを占めているホイールは大幅な軽量化が可能なアイテムなんです!
ボントレガーホイールのフラッグシップモデル“AEOLUS(アイオロス)”シリーズ
ボントレガーホイールの主力モデルといえばフルカーボンリムのアイオロスシリーズ。ギリシャ神話の風の神の名前なだけあって、全てのモデルがエアロ効果に優れた高速移動に向けて設計されたモデルとなっています。リムハイトも35mm、50mm、70mm、90mmと揃い、いずれも空気抵抗の軽減をコンセプトに作られているため、通常の巡行からタイムトライアルのようなシーンにも対応します。
しかし今回リリースされたAeolus XXX(アイオロストリプルエックス)はリムハイト20mm(実測)と、エアロ効果とは無縁と思えるほどの大人しめなデザイン。それもそのハズ、今回のアイオロスは前後でなんと976gの超々軽量ホイール!!!風のように(!?)軽い!!そんなAeolus XXXを各パーツごとに紹介していきましょう。
トレック独自製法のOCLVカーボンで作られたフルカーボンリム
横幅25mmオーバーのワイドリム化が進む中、アイオロストリプルエックスは21mm幅のチューブラータイヤ専用リムです。700X23Cなどのタイヤに合わせたリム幅としてはスタンダードですが、近年は700X25C以上のタイヤサイズが一般化してきている背景からワイドリムが増えています。
パワー伝導効率や転がり抵抗、グリップ力や衝撃吸収性などにおいては25Cのみならず28Cなどの能力が高いため、太めのタイヤを履かせることのできるワイドリムが主流となってきています。が、軽量化に特化させるとなると使うタイヤはせいぜい25Cまでなので、あえてワイドリム化する必要もないということになります。
リム単体の重量は発表されていませんが、ハブとスポークの重量から割り出す限りではおよそ210gほど。ごく一般的なアルミクリンチャーリムが420~500gくらいで、アルミチューブラーリムが330~420gくらいでしょうか。もちろんメーカーによって差はありますが、300gを切っているというだけでもかなり希少といえます。仮にホイールの軽さが中心にあるハブの重量に由来しているのであれば、ヒルクライムにおける効果的な軽量化とは言えません。
あくまでも外周部分の軽さをヒルクライムにおける武器とするならば、リム重量が軽いアイオロストリプルエックスは最強のアイテムです!!しかもトレックのお家芸であるOCLVカーボンとくれば精度と強度に不足はないことが分かります。またカーボンリムの場合、ブレーキシューも専用品が必要です。
DT SWISS製の高精度で軽量なセラミックベアリング使用のハブ
スイス製の時計は高精度で有名ですが、自転車のハブでもスイス製は高精度。水と空気がいい(イメージ)といいものが作れるのだと思います。精度の高さによってガタが出にくく、長期間の使用に耐えてくれるので、結果⇒長持ちという図式になります。メインボディにはカーボンを採用し、ベアリングはセラミックベアリング。いずれも軽量化に貢献しています。
セラミックベアリングは鋼球ベアリングよりも硬度が高く、表面が滑らかで真球度も高く作られています。金属と違い錆びないので粘度の高いグリスが必要ないことから、特に空転させている時の回転が軽いことも特徴の一つです。セラミックベアリングで使用されるグリス(オイル)はどちらかというと、ベアリングを支える金属のベアリングレース(ベアリング受け)の熱膨張や摩耗に対して必要だったりもします。
自転車パーツにおけるセラミックベアリングの回転に関しては、体感レベルとして賛否両論ありますが、物理的に重量が軽いという事実は変わりません。ベアリングそのものも軽いですし、ダメージを防ぐためのグリスが少なくて済む、もしくはオイルのようなもので済むので物量として軽くなっています。また、フリーボディのスターラチェットは36Tを標準(一般的には18T)とし、踏み込んだ際の掛かりがいいのも特徴です。しかも54Tにカスタムも可能で、惰性で走ることが少ないヒルクライムでは重宝する機構です。
空気抵抗も軽減してくれる高強度&軽量なステンレスエアロスポーク
スポークの素材にはステンレス鋼(工業的な呼称はいろいろですが、以下ステンレス)を使用しています。ステンレスといってもいろいろあり、家庭にあるスプーンやフォークなどもステンレスです。さすがに同じものではないですが、一般的に錆に強いというのが特徴の一つです。
DTスポークに使われているステンレスは金属加工の歯に使われるほどの硬度を持ち、耐摩耗に優れています。走行中に側溝などにはまってスポークをガリッと引っ掛けてしまうようなことがあっても簡単には破断したりはしません。更にきし麺のようなブレード形状なので高速で回転するホイールへの風の巻き込みも少なく、通常の棒状のスポークと比べて軽くなっています。スポークヘッド(ハブ側)はストレート形状で、曲げ加工のあるスポークに比べて破断のリスクの少ない形状になっています。
重量だけでいえばアルミスポークやカーボンスポークに軍配が上がったりもしますが、様々な面での強度の高さからステンレススポークが使われています。専用のニップルでカーボンリムへのダメージもなくし、振れ取りなどの調整が容易に行えることもいじる側からすると高評価なポイントの一つになります。
接着で固定するチューブラータイヤ&チューブラー専用リム
ごく一般的なタイヤ形状は、リムの内側にタイヤのビード(端の縁部分)を引っ掛ける構造をしています。チューブラータイヤの場合は ヒルクライムのみに特化させていくなら700×20Cなどのチューブラータイヤで軽量化を図ることも可能です。単純に細いタイヤでグリップ力が落ちるので使用条件を考えて選択しましょう。
最近ではパワー伝導効率から22~25Cなどのタイヤサイズが主流で、各ブランドのハイエンドタイヤならば押しなべて軽量です。チューブラータイヤの多くは中のチューブにラテックスを使用しているため、軽量かつ乗り心地がいいのが特徴の一つです。空気圧が減りやすいのがタマに傷ですが、非常に柔軟性が高いのでブチルチューブに比べて針などによる貫通のリスクも(やや)減ります。軽量化にこだわるならばシーラント(パンク防止)剤を入れるのは野暮ってもんです。
チタンの歯にカーボンのアームで構成されるカセットスプロケット
カセットスプロケットの素材に関しては、チタン、カーボン、アルミ削り出しなどの選択肢によって軽量なものを手に入れることができます。ヒルクライムに限定するならばサイズも11-28、11-30、11-32などの歯数が必要で、サイズが大きくなるので当然重量も増えてしまいます。ので、ここもやはりハイエンドグレードのカセットスプロケットがオススメとなります。
シマノのデュラエースでは歯を支える中心部分の素材をカーボンとし、ヒルクライムで強制的な変速や力の掛かる軽いギアの素材をチタンにしています。軽量かつ耐久性に優れるレースグレードは結果長持ちもするので、使用する条件にもよりますがよい買い物ともいえます。
性能を最大限活かすことのできるヒルクライムを堪能!
軽量ホイールの真骨頂といえばヒルクライム。ホイールそのものの重量と特に外周部分の軽量化によって登りにおける負担は圧倒的に減ります。車体は軽量フレームとして他を圧倒するエモンダSLRを使用。ちなみに画像の勾配は裏筑波の序盤で13%ほど。短距離ならば勢いで走り切れる範囲ですが、これが数キロ続くとなるとなかなかキツい・・・。
アイオロスXXXを投入すると、ペダルを踏むというより体重を乗せるだけで進んでくれます。国内のヒルクライムイベントでは下りのコースはなく距離は長くとも25km程。イベントでは割り切ってタイヤサイズも19C~23Cと細めのモデルでさらなる軽量化を図るのもアリですね。
軽さを活かして、街中のストップ&ゴーなども軽快に走ることができます。また、ロングライドやツーリングなどの際に中速度域で走る場合にもオススメ。長い距離では平地はもちろん峠越えなどがある場合もありますよね。高速巡行ではエアロホイールに敵いませんが、登りや信号待ちでの漕ぎ出しで負担を減らすことができる軽量ホイールはある種万能な働きをしてくれます。パワーのない女性サイクリストにもおすすめです。
タイヤサイズは適材適所ですが、ロングライドならば23C~26Cあたりがオススメです。高グリップでクッション性も高いので長距離における身体の疲労も軽減してくれます。細いタイヤは単純に路面の抵抗感が少ないですが、グリップ力、安定感、クッション性などを犠牲にしているので、長距離では太めのタイヤがいいでしょう。
アイオロスシリーズに超軽量ホイール誕生

アイオロストリプルエックスを各パーツから分析!
超軽量カーボンチューブラーリム採用で登りにかなりのアドバンテージ

超高精度!DT SWISS製セラミックベアリングハブも軽量化に貢献

耐久性の高いステンレスDT SWISS製エアロスポーク

パーツの組み合わせでさらに軽量に
軽量ホイールだけを用意しただけでは完成とは言えず、もちろんタイヤとカセットスプロケットが必要になります。ここも軽量化のできるポイントです。チューブラータイヤでさらに軽量化

スプロケットもハイエンドモデルで軽量化&耐久性UP

アイオロスXXXチューブラーで裏筑波を実走
登坂(ヒルクライム)の負担減はかなり体感できるレベル

下りもしっかりとした剛性を感じる
ヒルクライムをした後は、もちろん下りがあります。登り以上にテクニックを必要とする下りでも抜群の安定感を発揮します。その軽さゆえ体重をうまくかけていく必要がありますが、コーナーリングでホイールがよじれるような感触がないので安心して下れます。 またホイールが軽いことでコントロールがしやすいというメリットもあります。比べて重いホイールの場合は、コーナーリングでも直進の方向に進もうとする力がかかるので、軽いホイールのほうがハンドルを切りやすくなります。実際は車体を傾けつつコーナーリングしていきますが、ホイール全体の剛性感が高いことで傾けた時のたわみも少なく、思い通りに曲がることができます。ブレーキの不安は?
急ブレーキでもたわむこともありません。下りでは必然的に前輪荷重になるので、その前輪に制動をかけると一気に減速することができ、挙動も安定するので安心です。むしろフレームやフロントフォークの剛性感やブレーキそのものの精度によって制動力の差が生まれる気がします。アイオロスXXXは他のカーボンホイール同様にカーボンリム専用のブレーキシューを使用し、リムブレーキ面の精度も高いのでスムーズなブレーキングが可能です。平地でもメリットあり

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