現代ロードバイクタイヤの選び方|28c・32c時代の最適解とETRTO互換性ガイド

タイヤ選びの前提:互換性の基本

まず大前提として「互換性」があります。どんなに良いタイヤでも、ホイールやフレームに収まらなければ使えません。チェックすべき要素は以下の通りです。
- ホイール径:ロードバイクはほとんどが700C(ETRTO 622)。一部650B(584mm)も存在。
- タイヤ幅:23c、25c、28c、30c、32cといった規格。フレームやフォークのクリアランスに注意。
-
タイヤの種類:
- クリンチャー:最も一般的。チューブを使用。
- チューブレス:快適性に優れる。シーラントが必要。
- チューブラー:プロ向け。接着式。一般ユーザーには非推奨。
最新のロードバイクでは、チューブレスタイヤ(TL/TLR)の普及が急速に進んでいます。 特に28c以上の太めのタイヤとの相性が非常に良く、低めの空気圧で走れることで快適性とグリップを大幅に向上させられます。 また、シーラントが小さな穴を塞いでくれるため、パンクリスクの軽減にも効果的です。 ロングライドや通勤など、トラブルを避けたい用途にも高いメリットがあります。
現代のトレンド:28c・32cが主流に

かつては「23cが最速」とされていましたが、現在は28cや32cが標準的な選択肢です。
- 23c:市場からほぼ消えつつある。軽いが、高圧運用で硬く、快適性に乏しい。
- 25c:一時期の定番。現代のホイール設計にはやや細め。
- 28c:現在の定番。レース・ロングライドを問わず万能。
- 32c:エンデュランスロードや長距離向き。快適性と安定性が抜群。
最新の研究では、細いタイヤよりも太いタイヤの方が実走での転がり抵抗が低いことが示されています。
👉 Are narrower tyres “faster” – rolling resistance(BikeGremlin)リム幅とタイヤ幅の関係

「どの太さのタイヤを選べるか」はリムの内幅によっても左右されます。近年はワイドリム化が進み、内幅21mm以上が主流です。
| タイヤ幅 (mm) |
19mm リム内幅 |
21mm リム内幅 |
23mm リム内幅 |
25mm リム内幅 |
|---|---|---|---|---|
| 22–24 | ● | ● | ||
| 25–27 | ● | ● | ● | |
| 28 | ● | ● | ● | |
| 29–34 | ● | ● | ● | ● |
| 35–46 | ● | ● | ● | |
| 47–57 | ● | ● | ||
| 58–65 | ● |
※この表は Continental / ETRTO の最新推奨を参考に、19〜25mm 付近だけを抜粋・簡略化したものです。
最終的な適合可否は、必ずタイヤとリムのメーカー公表値をご確認ください。 Tire/Rim combinations – ETRTO standards(Continental Tires)
リム内幅21mmに23cを装着するとタイヤ断面が不自然に四角くなり、乗り心地やグリップが悪化します。現代のリム幅には28c〜32cが自然にフィットします。
太いタイヤはなぜ速いのか?空気量と変形の関係

太いタイヤの大きなメリットは空気室の容量が多いことにあります。同じ空気圧で比べても、細いタイヤに比べて太いタイヤは内部の空気量が多いため、路面の凹凸に対して変形が穏やかです。
- 細いタイヤ:凹凸に乗り上げると縦方向に大きく潰れて跳ねやすい → エネルギーロス増加
- 太いタイヤ:接地面が横に広く分散し、路面を「いなす」ように変形 → スムーズに進む
この違いが「太いタイヤの方が実走で速い」と言われる理由です。主なメリットは以下の通りです。
- 転がり抵抗の低減:跳ねないため、推進力を効率よく路面に伝えられる。
- グリップ向上:常に路面と密着しているため、ブレーキやコーナリングが安定。
- 快適性アップ:細かい振動を吸収し、長距離でも疲労しにくい。
- 低圧でも安全:空気量が多いので低圧運用でもリム打ちしにくい。
なお、太いタイヤは細いタイヤに比べるとわずかに空力(空気抵抗)の面で不利になる場合があります。 しかし実走では、路面抵抗の低減や快適性による疲労軽減効果の方が大きく、 総合的には太めのタイヤの方が速いことが多い、というのが現代の常識です。 特にアマチュアのロングライドやエンデューロレースでは、その傾向が顕著です。
結果的に「太い=重い=遅い」という昔の常識は覆され、28cや32cが速さと快適性を両立できるサイズとして評価されています。
用途別チェックポイント
ここからが本題です。タイヤ選びでは「どのブランドがいいか」よりも、まず自分の用途に合った性能を優先することが大切です。
通勤・街乗り
- 耐パンク性能:パンク防止ベルトや厚めのケーシングがあるモデルを選ぶと安心。
- 耐久性:寿命の長いコンパウンドを採用しているタイヤがおすすめ。
- 安全性:サイドにリフレクターラインがあると夜間走行時に被視認性が向上。
例:耐久性とパンク防止性能なら、Bontrager H2 Hard-Case などが代表的です。
ロングライド・ツーリング
- 快適性:しなやかなケーシングを採用したタイヤは疲労軽減に貢献。
- 耐久性:長距離に耐えるトレッド寿命を重視。
- 低転がり抵抗:長時間走るので効率の良さも大切。
例:快適性としなやかさを両立した Bontrager R3 Hard-Case Lite や Continental Grand Prix 5000 S TR が定番の選択肢です。
レース・高速巡航
- 軽量性:ホイール外周重量を軽くすることで加速が鋭くなる。
- 低転がり抵抗:トップスピードの維持に直結。
- グリップ力:コーナリング性能が勝敗を左右する。
例:レース用途では Continental GP5000 シリーズや Pirelli P-Zero Race TLR が人気です。
雨天・オールウェザー
- ウェットグリップ:雨天でも安定した制動力とコーナリングを確保。
- トレッドパターン:細かい溝があるモデルは排水性が良い。
- 耐スリップ性:全天候対応コンパウンドを選ぶと安心。
例:全天候向けには Bontrager AW3 Hard-Case Lite や Continental Grand Prix 4-Season などが定番です。
グラベル・ツーリング

- 太さ:32c以上が基本。35c〜40cなら安定感が抜群。
- 耐カット性能:鋭利な石や枝に強いケーシングを採用したモデル。
- チューブレス対応:低圧で走れてグリップ力・快適性が向上。
例:グラベル用途では Bontrager Girona Pro GR TLR や Bontrager Betasso RSL GX TLR などがよく選ばれます。
空気圧と快適性・転がり抵抗の関係

昔は「高圧=速い」という考え方が主流でした。しかし実際には、高圧すぎると路面の凹凸で跳ねてしまい、実走ではかえって抵抗が増えます。太めのタイヤを適正な低めの空気圧で運用した方が、快適で速いというのが現代の常識です。
例:28cで内幅21mmリムなら、体重70kgのライダーでフロント6.0bar、リア6.5bar程度が目安。路面状況によって微調整するとさらに快適です。
前後輪の空気圧はどう分ける?
ロードバイクはライダーが乗車すると、前後の荷重配分はおおよそフロント40%・リア60%になります。そのため、リアタイヤの方に多くの荷重がかかり、空気圧も高めに設定するのが基本です。
- リアはフロントより0.2〜0.5bar高めにするのが目安。
- フロントを低めにすることで路面追従性とコントロール性が向上。
- リアを高めにすることでリム打ちパンクのリスクを低減し、安定した転がりに繋がる。
例えば28cタイヤを使い、体重70kgのライダーなら以下のような設定が現実的です。
| タイヤ幅 | フロント推奨圧 | リア推奨圧 |
|---|---|---|
| 25c | 6.5〜7.0 bar | 6.8〜7.5 bar |
| 28c | 5.8〜6.2 bar | 6.2〜6.7 bar |
| 32c | 5.0〜5.5 bar | 5.3〜5.8 bar |
あくまで目安ですが、「リアが少し高め」を意識することで、快適性と安定性のバランスが取れます。
まとめ:現代の最適解とは?

- 細い=速いは過去の常識。今は28cや32cの方が実走で速く、快適。
- まずはリム幅とフレームのクリアランスを確認。
- そのうえで用途別に注目すべき性能を明確にする。
- 通勤なら耐パンク・リフレクター、ロングライドなら快適性、レースなら軽量性と低抵抗。
初心者はまず28cのクリンチャーを基準に選ぶと失敗しません。通勤中心なら耐パンク重視、ロングライド中心なら快適性重視と、用途に応じて自分に合った1本を見つけましょう。
