ロングライドのコツと心得|ロードバイクで100kmを「疲れない」で走るマネジメント術

2026年1月10日by NishimuraDaisuke

「100km先の景色を見に行きたい。でも、最後まで体力が持つか不安……」
「いつも後半になるとお尻や膝が痛くなって、走るのが辛くなってしまう」

ロングライドの成功は、脚力や機材の良し悪し以上に、自分自身をいかに管理するかという「マネジメント(管理)」にかかっています。

今回は、私が高校時代に経験した「大失敗」を教訓に、100kmを笑顔で完走するための具体的なコツと心得を解説します。

ロングライドに出発するロードバイクとライダーのイメージ
ロングライドは「根性勝負」ではなく、準備と運用で楽にできる“マネジメントの遊び”。
QUICK SUMMARY

100km完走の鍵は「根性」ではなくマネジメント。 ルート設計→走り方(ペース)→補給→痛み対策→帰宅の順に整えると、完走率が一気に上がります。
とくに初心者は、距離だけで安心せず「獲得標高」「補給地点」「撤退路」まで含めた“行き詰まらない設計”が最優先です。

この記事を読むと...
  • 100km走っても「バテない」ペース配分がわかる
  • お尻や膝の「痛み」を最小限にする方法がわかる
  • 挫折しないための「ルート設計」のコツが身につく

目次


【教訓】プロが教える「失敗の教科書」

ロングライド以前にサイクリングで絶対にやってはいけないこと。それは、「ボトルなし、財布なし、無計画な距離延長」です。

高校時代の真夏の朝、実際に体験した話です。その日はマウンテンバイク(MTB)で少し近所を走るだけのつもりでした。朝飯も食べず、ボトルも持たず、財布も持たない完全な「手ぶら」。スマホすらない時代のことです。

ところが、あまりに気分が良くてつい無計画に距離を伸ばしてしまいました。ロードバイクより遥かに体力を削るMTB、しかも無補給。気温はぐんぐん上昇、帰り道は激しい頭痛に見舞われ完全にパワーと集中力が切れ、目の前の自販機の水すら買えない絶望の中、重いバイクをトボトボと押して歩いて帰るしかありませんでした。

水分補給ができずに困る状況をイメージした写真
「大丈夫だろう」の積み重ねが、後半に一気に効いてくる。まずは“詰まない設計”の前提を作る。ボトルの水を早々に切らしてしまうとこうなる。
結論:この失敗の最大の原因は、体力不足ではなく「ルート設計と準備の欠如」にあります。

だからこそ、走り方の話に入る前に、まずは「設計」の話から始めます。


ルート設計のコツ:完走率は「距離」より“行き詰まらない設計”で決まる

ロングライドの失敗は、走行中の根性不足よりも「設計ミス」で起きることが多いです。初心者が特に注意すべき4つの鉄則を紹介します。

地図アプリでルート設計をしている様子
ルート設計は“走る前の勝負”。距離だけでなく獲得標高・補給地点・撤退路まで一緒に組み立てる。

鉄則① 距離だけで安心しない:「獲得標高」をチェック

同じ100kmでも、平坦と山岳では負荷が全く異なります。目安として、「獲得標高1,000m ≒ 距離+30km分の負荷」と考えましょう。

難易度 獲得標高(100kmあたり) アドバイス
初級(平坦) 〜500m 初めての100kmにおすすめ。向かい風に注意。
中級(丘陵) 500〜1,000m 小刻みなアップダウンで地味に脚が削れる。
上級(山岳) 1,000m〜 峠越えレベル。補給ポイントの事前確認が必須。

鉄則② 補給・水が買える場所を「点」で押さえる

「そのうちコンビニがあるだろう」で山に突っ込むのは危険です。事前に地図アプリでコンビニや自販機の位置を確認し、特に山間部では「最後の補給ポイント」を把握しておきましょう。

地元のお店で補給をしているサイクリストの様子
補給地点は“線”ではなく“点”で確保する。山に入る前の「最後の補給」を決めておくと安心感が段違い。営業日・営業時間も要チェック。

鉄則③ 帰りを「難しくしない」

ロングライドは帰り道ほど集中力が切れます。初心者は、次のような“帰りやすい設計”が安全です。

  • できれば後半が下り基調または追い風になるルートにする
  • 夕方に渋滞しやすい幹線道路、街灯のない道を避ける

鉄則④ エスケープルート(撤退路)を決めておく

「無理をしない」ではなく、「無理な時にどう帰るか」を決めておくのがプロの設計です。ルート沿いの駅(輪行ポイント)を把握し、たとえば「15時の時点でここにいたら電車で帰る」といった撤退ラインを固定しましょう。

駅で輪行準備をしているサイクリストのイメージ
“撤退の選択肢”があるだけで、心理的な余裕が生まれる。ルート沿いの駅(輪行ポイント)は事前に押さえておく。
ルート設計の結論

距離だけで判断せず、獲得標高/補給地点/撤退路までセットで決める。これだけで「途中で行き詰まるリスク」が激減します。


ペース配分のコツ:平均速度より「一定の負荷」

ルートが決まったら、次は走り方です。「前半の貯金は、後半の借金」であることを忘れないでください。

一定のペースで巡航しているロードバイクの様子
ロングライドは「一定」を刻めた人が強い。前半の飛ばしすぎは、後半に必ず利息付きで返ってくる。

目安:100kmを完走する平均速度

100kmを完走するための平均速度の目安は、休憩込みで時速15〜18km程度(走行時速20〜23km)です。速さよりも、まずは“最後まで崩れない”ことを優先しましょう。

「会話ができるペース」を死守する

息が切れるペースは糖質を激しく消費します。世間話ができる程度の負荷を維持しましょう。

信号待ちは「リセット」のチャンス

加速時の踏み込みは脚を削ります。軽いギアからゆっくりと加速し、一定の回転数(ケイデンス80〜90程度)を保ちましょう。

登り坂で頑張らない

坂道でスピードを維持しようとすると、消費エネルギーが跳ね上がります。ギアを一番軽くして、ゆっくり登るのが完走のコツです。


補給の心得:バテる前に「補給」を習慣化する

自転車は人間がエンジンです。サイクリングの消費エネルギーは1時間で500〜1,000kcalにも及びます。

補給ジェルやドリンクで補給しているイメージ
「お腹が空いた」は遅い合図。ロングライドは“定時補給”でエネルギー切れを防ぐ。

糖質摂取の目安は「1時間で60g」

体重60kgの人なら、1時間ごとに約60g(おにぎりなら約1.5個分)の糖質摂取が理想です。

補給ジェルを活用して「胃腸の負担」を減らす

走りながら食べ続けるのは大変です。当店では、少量で高エネルギーな「補給ジェル」を推奨しています。

メニュー例: ジェル1本(糖質約30g)+ スポーツドリンクや軽食。これなら胃もたれせず効率的にチャージできます。

「水だけ」は足攣りの原因に

大量に汗をかく場面で水だけを飲むと、体内の塩分濃度が下がり、足の攣りを招きます。必ず電解質を含むドリンクを併用しましょう。


痛み対策:お尻・手・膝が「限界になる前」に

同じ姿勢で乗り続けると、特定の部位に負荷が集中して痛みが出ます。「痛みが出てから」ではなく、出る前に逃がすのがロングのコツです。

走行中に姿勢を変えたり上半身をリラックスさせるイメージ
痛み対策は“予防”が勝ち。姿勢の固定を避けて、負担を分散させる。

「3点荷重」を意識する

ハンドル、サドル、ペダルの3箇所に体重を分散させます。お尻が痛いときは、少しだけ腹圧を意識して上半身を支えると和らぎます。

ポジションをこまめに変える

ブラケット、上ハンドル、下ハンドルを使い分け、手のひらの負担を一箇所に集中させないようにしましょう。

30分に1回の「姿勢リセット」

信号待ちで肩甲骨を寄せたり、首を回したり、足首を回したり。短時間でも“固まり”を解くと、後半の疲労感が変わります。


まとめ:100km先へ行くための「ハブ」

準備と設計、そして走り方。これらが揃えば100km完走は見えてきます。

ライド後に休憩しているサイクリストの様子
設計が整えば、100kmは“苦行”じゃなく“冒険”になる。最後に残るのは、景色と達成感。
ベテランの知恵:
スマホの電池切れや通信障害に備え、トップチューブバッグの中やスマホケースの裏には「お守り代わりの千円札」を忍ばせておきましょう。
次に読むべき専門ガイド

ロングライドは「頑張る競技」ではなく、自分を壊さずに遠くへ行く遊びです。設計が整えば、100kmは“苦行”じゃなく“冒険”になります。


よくある質問(FAQ)

Q:100km走るのに何時間かかりますか? A:初心者の場合、休憩を含めて7〜8時間ほど見ておくと安心です。平均速度よりも「一定の負荷」で淡々と走る方が、結果的にラクに完走しやすくなります。
Q:お尻が痛い時の対処法は? A:まずはサドルにどっかり座り続けないこと。3点荷重(手・お尻・足)を意識し、30分に1回は姿勢をリセットしましょう。それでも痛む場合は、パッド付きパンツの導入やサドル位置の見直しが有効です。
Q:平均速度はどのくらいが目安? A:無理のない目安は走行時速で20km前後、休憩込みの平均で15〜18km程度です。速さよりも「一定の負荷」を保つ方が、後半の失速や痛みを防ぎやすくなります。
Q:足がつる原因と対策は? A:主な原因は水分・電解質不足、そして筋肉の使いすぎです。水だけでなく電解質を含むドリンクを併用し、登りでは重いギアで踏まず軽いギアで回す(ケイデンス重視)ことが有効です。
Q:スマホがあれば財布は不要? A:電池切れや通信障害のリスクがあるので、現金(千円札)を持っておくのがベテランの知恵です。自販機で水を買う、輪行で帰るなど“帰宅の選択肢”が残ります。
西村 大助(Nishimura Daisuke)

西村 大助(Nishimura Daisuke)

バイクプラス共同創業者ショップ経験30年、MTB好き歴38年

1980年代後半にMTBに熱中し、アルバイト時代に老舗アウトドアブランドの自転車売場を担当。この頃に自転車整備士資格を取得し、本格的に自転車業界でのキャリアを歩み始める。2000年には外資系アウトドア専門店で専任メカニックとして勤務。その後、国内大手アウトドアメーカーの直営店で自転車売場を担当し、自転車取り扱い店舗拡大のためのスタッフ育成や販売体制の基盤づくりに貢献。 2003年には米国バーネット・バイシクル・インスティチュートへ留学し、体系的な整備技術を修得。帰国後は専門誌での記事連載やメンテナンスDVD出演などを通じて情報発信にも携わる。2007年にバイクプラスを共同創業し、全7店舗の立ち上げに関わる。 現在はオンラインストア運営やブログを中心に活動し、「専門性は高く、でも初心者にとって敷居は低く」を信条に、自転車のあるライフスタイルを提案している。

専門/得意分野
  • マウンテンバイク/ロードバイク/クロスバイク/eバイクの販売整備およびeMTBのカスタム
  • 米国メカニックスクールで学んだ体系的な整備技術
  • ショップ運営とスタッフ育成
  • サイクリング文化の普及活動
  • e-MTBでのトレイル/グラベルライド/キャンプ
保有資格
  • 1997年 自転車組立整備士合格
  • 1997年 自転車安全整備士合格
  • 2003年 Barnett Bicycle Institute Master Mechanic 3.0 Certified