あなたに合うのはどっち?XC王者の2台「Top Fuel」と「Supercaliber」を徹底比較!

2025年4月、ブラジル・アラシャで開幕したマウンテンバイク・ワールドカップ。このレースで印象的だったのは、Trekの2人のライダーがそれぞれのXCカテゴリーで勝利を収めたこと、そして2人が使っていたバイクが「違った」ことです。
エリート女子XCCで優勝したのはイギリスのEvie Richards(Trek Factory Racing)。彼女が選んだのは、トレックのTop Fuel。一方、U23女子XCOで勝利したカナダのIsabella Holmgren(Lidl-Trek)が使用していたのは、軽量・高効率でおなじみのSupercaliberでした。
この事実は、私たちが思っていた「クロカンバイクの常識」にちょっとした揺さぶりをかけてくれます。
「え、XCCのような短距離戦でTop Fuel?ロス大きくない?」「バイク逆でしょ?」そう感じた方も少なくないでしょう。
でも、だからこそ面白い。
これをきっかけに、どちらのバイクが“優れている”かではなく、“どちらがコースに本当に合っているか…” はたまた、“どちらが自分の脚質や走り方に合っているか”、“どんなコースやライドシーンで自分らしく走れるか”——そんな視点で選ぶことの大切さを、今回のレースは改めて教えてくれた気がします。
スペックやトレンドだけでなく、自分自身のスタイルにしっくりくるかどうか。そんな「納得感ある選び方」が、バイク選びには本当に重要です。
XCCとXCO、どう違うの?先に知っておきたい2つの種目
この記事で紹介している「XCC」と「XCO」は、どちらもマウンテンバイクのレース種目ですが、距離も戦い方も大きく異なります。
項目 | XCC(ショートトラック) | XCO(クロスカントリー) |
---|---|---|
正式名称 | Cross-country Short Track | Cross-country Olympic |
レース時間 | 約20〜60分 | 約90〜105分 |
周回距離 | 〜2km | 4〜6km |
特徴 | 短距離・高速・ポジション争い | 登り・下り・持久力と技術の総合戦 |
主な位置づけ | 独立した公式種目でもあるがXCOのスタート順に影響する予選的扱いでもある。 | 本戦。アトランタオリンピックからオリンピック正式種目になっている。 |
つまり、XCCは短時間のスプリントバトル、XCOは長時間の本格的な耐久戦。今回の勝利で使われた2台のバイク選択が「従来のセオリーからすると意外な選択」に感じられる理由は、まさにこの違いにあります。
勝利が証明する、2つのバイクの“ポテンシャル”
まず押さえておきたいのは、どちらのバイクも「プロが、ワールドカップで勝つために選んだ」こと。これだけで、どちらも競技レベルに耐える実力があることは明白です。
選手名 | 使用バイク | レースカテゴリ | 結果 | 過去の主な戦績 |
---|---|---|---|---|
Evie Richards | Top Fuel | エリート女子XCC | 優勝 | 2021年 世界選手権XCO優勝、2024年 世界選手権XCC優勝、XCC通算7勝は史上最多勝利数 |
Isabella Holmgren | Supercaliber | U23女子XCO | 優勝 | 2023年 ジュニア世界選手権(シクロクロス・XCO)優勝、2024年 U23世界選手権XCC/XCO優勝、U23U23ツール・ド・ラヴニール 総合2位・山岳賞獲得 |
単なる「バイクの性能」だけでなく、「レースコース」「選手の得意分野」「戦略」など、複数の要素をふまえて最適な選択がなされたわけです。
“逆”にも思える選択。その理由は?
今回のバイクチョイス、一見すると逆にも思える選択です。
なぜなら一般的には、
- XCC(ショートトラック)=平坦+短時間 → Supercaliberのような軽量&効率重視が有利
- XCO(フルクロスカントリー)=登りも下りもテクニカル → Top Fuelのようなサスペンション性能が活きる
と考えるからです。ところが、実際はその逆でした。
これはコースの特性に深く関係しています。アラシャのXCCコースは、単に短いだけではなく、「ルーズな路面」「小刻みなアップダウン」「滑りやすいコーナー」が多い構成。高速で突っ込むというよりも、マシンの安定感と下りの攻めやすさが求められる内容でした。
— Evie Richards(エリート女子XCC優勝)
“It just made sense for that course. We were faster on it in testing and it felt easier to ride.”
「今回のコースでは、Top Fuelの方が理にかなっていたの。テストでも速かったし、乗っていてラクに感じたのよ。」
出典:Trek Factory Racing公式サイト(Araxáレースレポート)
ということで、SupercaliberでXCC世界選手権を制したEvieは今回Top Fuelを選択するに至ったわけです。
一方、XCOコースももちろんテクニカルではありましたが、シクロクロスやロードレースでも活躍するIsabellaはスタートから積極的に前に出て、登りでペースを上げ、後続を引き離す走り。軽さと推進力を武器に勝つ戦略なら、Supercaliberはベストな選択になります。
Supercaliber|軽さと効率の“プロフェッショナル”

Supercaliberは、Trekがクロスカントリーレースのために開発した“超効率型”フルサスバイク。最大の特徴は、リアトラベル60mm+独自のIsoStrut構造。一般的なリンク式サスペンションではなく、ストレートで剛性の高い構造にすることで、ダンシングやヒルクライム時のロスを最小限に抑えています。

また、Supercaliberは重量も非常に軽く、完成車状態でも10kgを切るモデルも存在します。これは特に登りでのメリットが大きく、XCレースのような周回コースで何度も登り返すような展開では、脚の負担を減らしながらタイムを稼げるという強みがあります。
ペダリング効率に加えて、ジオメトリも反応重視のシャープな設計。ハンドリングの速さも武器になります。
こんなライダーにおすすめ:
- レースで勝ちたい、タイムを削りたい人
- ペダリング効率を何より重視する人
- 登りが得意で、バイクの軽さを武器にしたい人
Top Fuel|攻めの下り、抜群の万能感

Top Fuelは、もともとTrekの正統派クロスカントリーバイクとして、軽量性と効率性を武器に多くのXCレースで活躍してきたモデルです。しかし、Supercaliberの登場により、その立ち位置は大きく変化しました。TrekはTop Fuelをよりアグレッシブに、そしてより汎用的なトレイルバイクとして再定義。こうしてTop Fuelは、“ダウンカントリー”というカテゴリーで再設計されたのです。

トラベル量は従来の100mmから120mmへと増加し、ヘッドアングルはより寝かせられ、下りでの安定感が格段に向上。さらにタイヤクリアランスも広く取られ、荒れた路面やテクニカルなセクションでも高い走破性を発揮します。それでいて、軽量なフレーム設計と効率的なペダリング性能は損なわれず、XC的な登坂力も十分に備えています。
本来はXCレースバイクとしての血統を持つTop Fuelですが、その“走破性の進化”を逆手に取り、近年ではテクニカルなXCCやXCOコースで再評価されつつあります。今回のような複雑なコース設定においては、バイクの総合力が結果に直結し、Evieの勝利がその一例となりました。
— Evie Richards(エリート女子XCC優勝)
“The Top Fuel really let me attack more of the trail and carry speed through sections I would otherwise have to check up for.”
「Top Fuelは、普段なら減速してしまうようなセクションでもスピードを保ったまま攻めることができました。」
出典:Trek Factory Racing公式サイト(Araxáレースレポート)
実際のレースでは、120mmのフルサス構成とジオメトリのバランスが、荒れたセクションでもペースを崩さず走り切ることに貢献。登れるのに攻められる、まさに“万能XC系”としてのポテンシャルを発揮しています。
こんなライダーにおすすめ:
- 下りでスピードを落としたくない人
- トレイルやロングライドにも使いたい人
- 1台で“遊びもレースも”両立したい人
シーン別比較でわかる「使い分け」
「どちらが正解か」ではなく「どちらがよりフィットするか」。ライディングシーンによって求められる性能は異なります。以下の表では、SupercaliberとTop Fuelの得意分野を比較してみました。バイク選びの参考にしてみてください。
使用シーン | Supercaliber | Top Fuel |
---|---|---|
ヒルクライム | ◎ | ○ |
高速なXCOコース | ◎ | ○ |
テクニカルXCOコース | ○ | ◎ |
XCCショートトラック | ◎(路面良好) | ◎(テクニカル) |
ロングトレイル | △ | ◎ |
バイクパッキング | △ | ○ |
初レースデビュー | ○ | ◎ |
よくある質問&販売店的アンサー
-
Q. Top Fuelってレースバイクって言えるの?
A. 言えます。2025年現在、ワールドカップでも採用実績あり。Trek自身が「XCにも本気で使えるバイク」として開発しています。 -
Q. Supercaliberにドロッパーポストって必要?
A. コース次第ですが、最近は多くの選手が装備しています。軽さを保ちつつも下りの安心感は重要です。 -
Q. 下りが苦手だけど、レースに出たいならどっち?
A. Top Fuelの方がミスに強く、コーナーで減速しすぎなくて済むので安心です。
バイク選び診断チャート
自分に合うバイクがどちらか、なんとなくわかってきた人も多いはず。でも、最後にもう一押し!以下の簡単な診断チャートで、直感的に自分にフィットする1台を見つけてみましょう。
質問 | YESなら… |
---|---|
登りで前に出たい | Supercaliber |
下りで攻めたい | Top Fuel |
レースだけでなくトレイルでも使いたい | Top Fuel |
とにかく軽さ優先 | Supercaliber |
スタッフからのひとこと
バイクプラスのスタッフも、日々のライドや試乗を通じて各モデルの特性をリアルに体感しています。ここでは、SupercaliberとTop Fuelのどちらにも乗ってきたスタッフたちの率直なコメントを紹介します。バイク選びに迷ったとき、実際に乗っている人の声が一番のヒントになるかもしれません。
まずはTop Fuel派スタッフのコメントからご紹介。
— Hiraku Miyazaki(バイクプラス 戸田彩湖店店長)
「私は軽量で上りの効率を重視したバイクが欲しいけど、トレイルの下りも楽しめるTop Fuel派です。今はTop FuelよりPowerfly FSにハマってますが。Top Fuelは下りが楽しくなるし、安心感があって好きです。」
もちろん、Supercaliber派のスタッフも。走りのスタイルやライドの目的によって、選ぶバイクは変わってくるんです。
— Wataru Maruyama(バイクプラス 横浜港北ニュータウン店)
「Supercaliberの軽さと反応性は、一度味わうと病みつきになります。ガシガシ、黙々とペダルを回し続けたい自分的には“脚を無駄に使わないのに伸びがある感覚”、ぜひ体感してほしいです。」
まとめ:どちらも“勝てるバイク”。あなたに合うのはどっち?
今回の開幕戦で明らかになったのは、「どちらも勝てるバイク」だということ。選手の走り方、コースの特性、そして本人のフィーリングで選ばれた2台が、結果としてトップに立ちました。
販売店としても、「どちらも胸を張っておすすめできる」からこそ、逆に大切なのは“乗り手のスタイルに寄り添う”提案だと思っています。
どちらかを「正解」にする必要はありません。大事なのは、「あなたにとっての正解」を見つけること。Top FuelとSupercaliber、どちらも、世界のトップが認めた一台です。迷っていても迷っていなくても店舗スタッフ(近くの店舗を探す)にぜひお声がけください! 当店ならいつでも12回分割金利手数料0円のショッピングローン(審査あり)をご利用いただけます。
【関連リンク】
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