2019年モデルEmonda ALR(エモンダALR)試乗インプレッション!トレック軽量アルミロードは何が変わった?
アルミロード史上最軽量バイクエモンダALRのラインナップ紹介
完全にリューアルされた新型エモンダALRのフレーム
ALR5の完成車重量は?
完成車重量は(メーカー公表値・サイズ56)リニューアル前の2018年モデルのカタログ値が8.47kg、対して2019モデルが8.75kgと僅かに重量が増えています。 この重量差に関しては後述しますがよりワイド化したリムを採用したホイールによる影響が大きく、フレームフォークに関しては、前モデルとほぼ相違ない重量に仕上がっています。 また油圧ディスクブレーキモデルも登場しましたが、リムブレーキモデルと比較して110g増(完成車重量8.86kg)という僅差に収まっているのも何気にすごい所です。
サイズ50で実重量を計測しました。
実際にサイズ50のALR5リムブレーキモデルをペダルレスで実測したところ8.6kg。価格で考えれば非常に軽い仕上がりといえるでしょう。
300シリーズAlphaアルミフレームはワイヤー内蔵で見た目すっきり
見た目に関しては内蔵ルーティンとなったケーブル周りが目をひきます。先代のALRが誕生するにあたりトレックが総力を挙げて開発した「300シリーズAlphaアルミニウム」はもちろん新モデルも採用。
ハイドロフォーミング加工によってカーボンに迫る複雑なアルミチューブ形状も実現している。
溶接された跡がどこにあるかわからないくらい平滑に仕上げられた「インビジブルウェルドテクノロジー」も新モデルでも採用されており、よりすっきりとした外観が際立っています。
軽さだけでない、安心して走れるクオリティ
トレック史上最軽量のアルミフレームは生涯保証も付帯する
カーボン、アルミモデルに関わらず、クラス最軽量をマークしつつメーカー生涯保証も付帯。 ただ軽いバイクという訳ではなく、長期間その性能が持続して発揮できるよう十分考慮しデザインされているところもポイントです。
リムブレーキモデルはダイレクトマウント方式に
見た目の部分に話を戻すと、ブレーキ部分に関しては最近他社でも普及がすすむ「ダイレクトマウント」タイプを採用している事もあげられます。 このダイレクトマウントですがブレーキキャリパー本体を1本のボルトではなく2本でフレーム・フォーク側へ固定させる新方式。
普及の進むダイレクトマウント方式を採用
実はこの方式、ブレーキの制動力向上が謳われていますが、取り付けるフレーム(フォーク)側もしっかりとした設計を行わないとパフォーマンスアップにつながらないケースも考えられます。
フレームがたわまないように補強されたシートステイ部分。ブリッジも不要な部分は肉抜きされたデザインでぎりぎりまで軽く仕上げている。
ブレーキシューがリムに押し当てられると、2本の軸で固定されたブレーキキャリパーを受けるフレーム側にもかなりの力が及ぶのですが、力負けしてしまうとたわんでしまい期待した制動力を発揮できないというケースも考えられます。 大事なのはブレーキの規格だけでなく、この規格を十分に熟知したフレーム設計です。
上位モデルエモンダSLRと共通設計のH2ジオメトリー
エモンダシリーズのエントリー的な位置づけとなるALRシリーズですが、ハイエンドモデルのエモンダSLRと同じフレーム設計(H2ジオメトリー)を採用しているのも前モデルと変わらずです。 レースやヒルクライムを挟んだロングライドなど様々に使い方に幅広く対応できるので守備範囲がとても広いモデルですね。実際に試乗してきました!
足柄峠と乙女越で箱根を走る
新モデルが登場して以降、車体の組立整備メンテナンスなど確認で乗る程度でしっかりとした試乗ができていなかったので、今回はこんなコースでエモンダALR5をじっくりと試乗する事にしました。 足柄峠⇒御殿場⇒乙女トンネル⇒強羅⇒小田原というルートなので登りも下りもそれなりに。 今回はサイズ50の完成車そのままの状態で(普段52サイズに乗っているのでステムサイズのみ調整)出かけてきました。
足柄峠のコース紹介もブログにまとめてみました。 ◇ロードバイクで足柄峠ヒルクライムにチャレンジ!
出だしは意外とおとなしい?
新型ALRで出発して思ったのは非常にステアリングも漕ぎだした加速感もクセが非常に少ない印象を受けました。
話逸れますがこのカラー「パープルフリップ」の光に当たった時のツヤっぽさが個人的に大好きです♪
実は3年前のエモンダALR登場時にも同じようにヤビツ峠で試乗したのですが、その時は漕いだ瞬間にスイっと進む加速感が印象的でした。 対して今回は非常に良く言えば上品、言い方を変えるとあのガツガツくる乗り味でなかった事であっさりし過ぎていて普通に感じてしまったんですよね。 ところがそうでは無い事が実際にヒルクライム中に気づかされる事になりました。 前モデルのヤビツ峠の試乗インプレの過去記事もあるのでこちらも合わせて比較してみてください。
初代エモンダALR5でヤビツ峠へ ◇ヤビツ峠でトレック エモンダ ALR(Emonda ALR)をライドインプレ
乗り心地の良さと登りの進み方に進化あり!
おとなしいな、と感じたのにはどうやらいろいろ理由もありそうです。ひとつはスペックの紹介でもあげたホイールがリニューアルされたこと。 よりワイドリム化され、安定感が増した事や280g程度トレードオフで重量増となった事も乗った時の体感上の違いとなったかもしれません。 ところが、平地を走る分には落ち着いた走りだったのが実際足柄峠を登ると全く異なる印象を受ける事となりました。7%以上の登りがやたらと進む!
足柄峠の出だしの5%未満の緩斜面でも上に書いたような印象を持っていたのですが、矢倉沢前後からの登坂で気づいたのは7%前後で突然軽快に進んでくれる気持ち良さ! 傾斜が強くなれば車体重量が重ければ重いほど、より響くのは間違いないのですが、なぜだか非常にペダルが回しやすいんですよね。
勾配が強まるとペダルを踏むと押し出されるような気持ち良い進みの良さを体感。
エアロホイールやエアロフレームが35kmあたりを境に空力性能によってすすーっと進むあの感じ。 それと似たような感覚を登坂で感じる不思議。平地だけで試乗していたらこのフレームの素性にまったく気づけなかったですし、違った印象を持ってしまったと思います。
回すペダリング、踏むペダリングどちらにも対応するレンジの広さ
ヒルクライム中に思わずえっ!!となって走りながら色々考えました。 初代のALRと決定的に異なるのが強めに踏みこんだペダリングの反応がすこぶる良いこと、それでいて足に疲労を感じさせないんですよね。 確かに初代ALRは漕ぎだしの加速も良く、登坂でのレスポンスも機敏で言ってみればちゃきちゃきの江戸っ子みたいな感じでしょうか。 登坂のペダリングは思い返せば比較的軽めのギアをケイデンス重視で回すと進みが良いのですが、やや重ためのギアで踏み込むとやや進みがチグハグになることもあり、足も多少弾き返されるようなちょっとした硬さを感じたのも事実。 対して、2世代目となるエモンダALRハイケイデンス主体でもそつなくスイスイ登るし、強く踏み込んでも一瞬のタイムラグののちぐいぐい動力に変換してくれて、脚の負担を感じさせない。どんな力加減で漕いでも進みがギクシャクしません。 このそつなさこそが実は物凄い変化であった事にやっと気づいたのです。 最初に乗った時の印象はなんかおとなしいと思った感覚は端的にいえばめちゃくちゃ洗練されてたからだったのですね。 さしずめ京美人見たい!?そう考えるとフレームカラーの「パープルフリップ」も雅なデザインに急に見えてしまうのが不思議です。。
ペダリングを受け止めるボトムブラケット部分。
内蔵となったワイヤールーティンも要注目
この傾向は最新のエモンダSL、SLRでも乗っていて感じる部分があり、あらゆるペダリングにきちんと反応してくれる乗り味はアルミフレームのALRでもしっかりと体現されています。 なんとなく乗り手にペダリングを強要するような軽量バイクにありがちな反応がないのが嬉しいですね。
内蔵となったワイヤールーティンも要注目
路面からの突き上げ感が大幅に軽減
平地の走行時やよりスピードの出るダウンヒルで感じたのは腕や体への振動が少なくなっている事。 30km以上とある程度スピードが乗ってくるとハンドル周りから今までだと伝わってきた振動が非常に穏やかでした。 初代に比べてフォークの剛性にも変化があったようでエンド部分のしなりが効いているからかゴツゴツした感じが少ない印象。 アルミフレームですが100km超のロングライドでガンガンに乗ってもそつなく対応してくれそうな乗り味でした。ステアリングも操作感と落ち着きを両立
前モデルのフォークはステアリングの機敏さを演出するのに一役買っていましたが、ニューモデルだとどうなのか? フロント側の突き上げが抑えられた事でのデメリットがあったりするのかとも思いましたが、箱根の下りであっても曲がる事への不安を感じさせない思い通りスパッと曲がれる操舵性の良さは健在でした。
フォークブレードはOCLVカーボン採用
ストレートフォークらしい反応の良さがあり、急ブレーキなども試したもののしっかりフォークブレードが踏ん張ってくれるので下りも乗っていて楽しい印象。 また、重量はかさむもののワイドリム化されたホイールのコーナリングの踏ん張り下りの安定感の良さにつながっていますね。
角が取れた洗練された乗り心地が軽量アルミフレームとは思えない
とにかく上りやすくなった事はヒルクライムバイクとして非常に重要な要素です。 ◇登っている内に余裕がなくなり、ペダルを漕ぐリズムが保てなくなってきた時にしっかり受け止めてくれる安心感。 ◇突き上げ感の低減で今までよりロングライドに積極的にチャレンジできそうな洗練された乗り心地。 ◇ダウンヒルにおいて車体コントロールがしやすく、道が荒れていても車体が跳ねるような気を遣う挙動が少ない。 このあたりが生まれ変わったエモンダALRの良さだと感じました。アルミフレームらしい機敏で反応性の良い長所を残しつつ、アルミや軽量フレームのネガティブ要素が抑えられた角の取れた洗練された乗り心地は特筆ものでしたね。 他社含めこの数年でアルミフレームは軽さ含めて格段に進歩しています。出だしの加速感の良いモデルも数多く出ていますが一日乗り続ける事を考えれば軽快感だけでなくしっかり脚を残して気持ちよく乗れる事ってとても重要だと思います。 フレームデザインだけが変わったのではなく乗った気持ち良さと快適性が磨かれた点は他社よりも一歩先をゆくアルミロードといえるのではないでしょうか。エモンダALRに乗るならこんなふうにカスタムしてみたい!
実際に2019モデルのエモンダALRに乗ってみた訳ですが、自分がもし乗るならこんな事してみたい!という部分も挙げてみようと思います。ホイールの高性能化
エモンダALRシリーズにアッセンブルされている純正ホイールがントレガーAffinity(アフィニティー)。ボントレガーではロード系ホイールのワイドリム化をすすめていますが、重量としては2.35kgほどあり、お世辞にもめちゃくちゃ軽いという訳ではありません。 なので、将来的に軽めのホイールに替えてあげる事でより登りも平地でも俊敏さが確実にアップします。フルクラムのレーシングゼロやカンパのシャマル、そしてボントレガーならばパラダイムエリートあたりとの相性がよさそうですね。
軽量ロードバイク用ホイールのメリットやラインナップについて ◇おすすめ軽量ロードバイクホイール比較
ブレーキの制動力アップ
ALR5には105コンポのBR-R7010が付属していて、乗ってみる限りストッピングパワーは上々。平地や登りで制動で不安を感じる事はないでしょう。 ただ、下りに関して、例えば裏ヤビツみたいな下り傾斜とカーブが連続するような箇所を通過するときなどもう少し制動力や、ブレーキをかけた際の微妙な強弱(要は細かなコントロール性)がアップするともっと余裕を持って走れると思います。 105ブレーキによって必要な制動は十分確保されているとはいえ、しょっちゅうヒルクライムする方はアルテグラなどワンランク上のブレーキにするのも良いかもしれません。パーツ交換して超軽量バイクに仕上げる
フレームそのものは元々カーボン製と肉薄するくらいの軽さが売りのエモンダALRだけに、素性の良さを活かして徹底的に軽くするのも面白そうですね。 戸田店長宮崎がエモンダALRを軽量カスタムしたブログもあるのでこちらもどうぞ♪
初代エモンダALRを徹底的に軽量化したらこうなった! ◇Emonda ALR(エモンダALR)はどこまで軽くなる?軽量化にチャレンジ
快適性をパーツでさらに高めてロングライド
ロングライド好きの自分なら快適性をアップさせるパーツも積極的に取り入れてみたいと思いました。 ドマーネでも使用されるIsocoreカーボンハンドルはハンドル周りの振動を抑える減衰性に非常に優れています。タイヤもグリップが効き、かつ乗り心地に優れたヴィットリアのコルサや最近発売されたコンチネンタルのグランプリ5000などタイヤもグレードアップしてみたいですね。油圧ディスク仕様モデルも今期より登場
2019年モデルの特徴としてはエモンダALRシリーズにもディスクブレーキモデルが登場したことも話題になりました。 シマノ105の新型油圧ディスクを採用したことで雨天など悪条件下でのダウンヒルなどで非常に安心できると思います。
105コンポーネントの油圧ブレーキが装備される。
カラーはマットグラベル/グロスクイックシルバー
ロードバイクでちょっとしたツーリングを楽しむバイクパッキングされる方も増えてきていますが、荷物があることでの重量増となるので確実にコントロールできる油圧のメリットは大きいでしょう。
カラーはマットグラベル/グロスクイックシルバー
2019モデルより油圧ディスクブレーキモデルが追加されました! 2019 TREK Emonda ALR 5 Disc(エモンダ ALR5 ディスクブレーキ)¥199,000(税抜)
実はフレームセット販売もされているエモンダALR
完成車だと2019モデルは105コンポーネントのALR5、そしてティアグラコンポーネントALR4の2車種ですが、実はフレーム単体でも販売されています。 カラー展開はALR5でも人気のパープルフリップ、そしてシックなALR4での展開カラー、マット/グロストレックブラックの2色ラインナップされます。
フレーム単体でも販売されているエモンダALR。カラーPurple Flip
ALR4で採用されるMatte/Gloss Trek Blackもラインナップ
セカンドバイクニーズにも対応する
なので、手持ちのパーツでセカンドバイクを作ってみたりするのも面白そうですね。 メインバイクの乗り換えの際に不要になった部品などを再結集してみたりなど、実際に乗ると単なるセカンドバイクに収まらない乗り心地の良さにびっくりするかもしれませんよ。 フレームセットの価格は税抜121,000円。カーボンフレームを用意するよりはるかに手ごろな価格でヒルクライムやロングライドを愉しむ事ができそうです。終わりに
いかがだったでしょうか?車体の紹介などいろいろ書いて長くなってしまいましたが、お伝えしたかった事はリニューアルされたエモンダALRは想像以上にヒルクライムが気持ちよく、また今までより長距離ライドも疲労感を感じることなく走れる一台としてしっかり作り込まれていた事。 正直、フレームデザインが変わった程度なんでしょ?と甘く考えてましたが実際に峠に登ってみてペダリングのしやすさや脚のダメージの少なさ、そして高速域の車体の挙動の落ち着き、振動の少なさは確実に初代ALRを上回っていると感じました。 車でもそうですが人気モデルのフルモデルチェンジはメーカーとしても非常に気を遣うと思うのですが、気合いを入れて作りこんだんだなという事を走って実感しました。登りが大好きな方はもちろん、登りが苦手。。という人であっても今までよりも楽しく走れること間違いなしです!
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