初心者の皆様がご購入されたマウンテンバイクでより楽しく快適に、そしてより上手に乗りこなせるようになるための「ポジション設定の基本」をご紹介するページ。こちらはその「サドルのセッティング編」です。
サドルは、高さ、前後位置、角度を調整できます。自分の身体やライディングスタイル、コースに合わせてセッティングすることで、トレイルでよりダイナミックにバイクコントロールができるようになり、ライディングが充実したものになります。セッティング次第でオフロードライディングの楽しさが劇的に変わりますので、ご自身にとってのここだ!!というセッティングを探してみてください。
ハードテール
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どんな自転車でもまずはサドルの高さが最重要項目ですが、車体の上で上下前後左右に身体を動かすマウンテンバイクライディングならではの基本的な考え方をご紹介します。
サドルの高さ
クロスカントリーレースのようにペダリングセクションが多いなら…
マウンテンバイクで、ロードバイクやクロスバイクと同じように車でも走行できるような舗装路や林道などを走行する場合、シッティング中心でライドすることになると思います。そのような場合であれば、サドルハイトはロードやクロスと同様のペダリング重視セッティングで全く問題はありません。
登りや平地もありつつも車が走行できないような荒れた路面でのライドを楽しむのであれば、サドルに座りペダリングするポジションを重視しつつも、サドルから腰を浮かせペダルに立ち、肘や膝でショックを吸収したり、重心を後方に移動したりなどの動作をしやすくするために、ロードバイクよりもあえてサドルを1cmくらい下げた状態にセッティングする人も割と多くいます(ドロッパーが主流の今、過去形で表現した方が良さそうな気もします)。急峻な登坂で瞬間的なペダリングパワーを出すのにも効果があります。
サドルの高さ
トレイルやパークなどで下りを楽しむのなら…
ダウンヒル系のパークや下り系のトレイルライドを楽しんだり、下りの走りやすさや楽しさを重視したいのであれば、サドルに着座してのペダリング効率はほとんど意識する必要はありません。1cmどころではなく、サドルに腰をかけた状態でベタ足がつくくらいまで下げるのもポジションとしてはおすすめです。その方がサドルが邪魔にならなくなり、ショックアブソーバーとしての身体の可動域が圧倒的に増加するので、より激しい路面に対応できるようになります。
また、刻々と変化する下りの勾配や速度に遅れることなく真ん中に重心を置いておける上に、ターン時に膝を進行方向に向け、お尻をコーナー外側に向けたりなど横方向の動作も格段に行いやすくなり、バイクコントロールを思いっきり楽しめるようになります。
ベタ下げだけでなく、内腿(膝)でサドルを抑え込んだりできる高さも意識しておくとさらに良いでしょう。
サドルの高さ
ただ、人間というのはわがままなもので…
様々なパークや登りくだりが複雑に繰り返すトレイルでライドを経験していくと、シッティング時のペダリングポジションも重視したいし、水平にしたペダルに立ち上がってバイクコントロールをしなければならないシチュエーションでのアグレッシブな操作性も重視したくなるものです。トレイルまでのアプローチで道路を走行する際は高く、トレイルに入ったら低くしたい! 登りのペダリングも下りのバイクコントロールも両方効率を求めたい!と。
しかも実際のところはベタ下げかマックス上げかの2択ではなく、その間のさまざまな高さが使えるとさらに便利よねと…。
そこでおすすめしたいのがドロッパーポスト。こちらの2枚の写真もドロッパーポストを使用してサドルの高さを変えて走っています。
サドルの高さ
ドロッパーは手元レバーでサドルの上げ下げがワンタッチで瞬時に可能になる優れもの
ドロッパーシートポストは、手元レバーでサドルの上げ下げがワンタッチで瞬時に可能になる優れものです。中でも電動タイプの手元レバーの操作感(レバーというよりスイッチ!)と反応の確かさは抜群です。
ミドルグレード以上なら標準でドロッパーポストが装備されているモデルも増えていますが、トレイルライドを本格的に楽しむのなら真っ先にアップグレードしたいパーツです。
クロスカントリー系レースでも大きな岩がゴロゴロした下りなど観戦の見どころとなる激しめのセクションも増えつつあるので、今やXCシーンでもドロッパーポストがあたり前になっています。
サドルの前後位置
ペダリング重視ならロードバイクと同様にペダリングに適した位置にセッティングすべきですが、刻々と路面状況や勾配が変化するマウンテンバイクライドシーンでは、あまり難しく考える必要はありません。
サドルの前後位置
目的を持って前後位置を調整しよう
マウンテンバイクの場合、サドルの上で1箇所にじっととどまっていることはほとんどありませんので、あまりシビアに考える必要のある項目ではありませんが、前後位置も調整可能です。サドルを前方に調整するとダウンヒル時や急ブレーキ時にお尻を後方に引く動作が格段にやりやすくなります。
サドルを後方にセッティングするとハンドルまでのリーチが若干伸びたようなポジションになります。また、サドルを後方にセッティングすると、急峻なアップヒル時に後輪に荷重が掛かるようになるため後輪にトラクションをかけやすくなります。ただし、ヘッド角が立っている上にショートストロークのフロントサスペンションを搭載した本格XCマシンでは、ホイールも軽量なため前輪が浮きやすくな流ので注意が必要です。
急峻なアップヒルで、前輪を浮かさずに前後の荷重バランスをいかにとるか…。後輪を滑らせずにいかにペダリングをするか…。これらも、マウンテンバイクライドの面白さ・難しさの1つです。アップヒルで前輪が浮きやすい場合は、胸を張って胸をハンドルに近づけて足元ではなく少し遠くを見ながら顔をハンドルの前に出す?ようなイメージで、足は踏むのではなく回すつもりでこいでみると上手に登れたりするかと思いますが、サドルを少し前下がりにセットしてみるのも隠れ技の1つです。
サドルの角度
サドルは腰を掛ける場所ですので、上半身も下半身も安定させるために基本的に水平にセッティングするものですが、マウンテンバイクでは腰を掛けることよりも重視されることがあるので、異なるセッティングをするケースがあります。
サドルの角度
下りメインなら前上がりを試してみるべし
サドルを前上がりにすると、ダウンヒル時にお尻を後方に引きやすくなるだけでなく、シッティングで下っている最中も前につんのめりにくくなります。ゲレンデダウンヒルなど、下りしか走らないような日にはおすすめのセッティングです。ダウンヒルのプロ選手のバイクはみんなこの写真のように前が上がった状態でセットされています。
急な登りで前輪がどうしても浮いてしまうなら...
写真はわかりやすくするために大げさに前下がりにしてありますが、サドルをほんの少しだけでも前下がりにすると、ハンドルにもたれかかるというか、つっかえるというか、ハンドルを前方斜め下方向に押し当てるような力を加えやすくなるので、急峻な登りで不思議と前輪が浮きにくくなります。のぼりの攻略が勝敗を分けるような場合や、どうしてもクリアしてみたい急峻なのぼりがある場合は、ちょっと試してみては?
ただ、長時間のマウンテンバイクサイクリングとなると、前上がりは、お股の軟部組織をピンポイントで攻撃するカタチになりますし、前下がりだと手のひらに過度な負担がかかりますので、極端なセッティングはおすすめしません。
いずれにしても、サドルの角度調整はすぐにできる作業なので、ライディングの途中で少しいじって違いを楽しんでみてはいかがでしょうか。
いかがだったでしょうか?
以上がマウンテンバイクのサドルのセッティングに関する基本的な考え方になります。乗りにいくコースによっても、もっとこうした方がいいかも...とか、このセッティングじゃないな...と感じたりするものです。もし時間にゆとりがあるなら、新しい気付きを得るためにも、トレイルライドの途中でもその場で色々とセッティングを変えてみてもいいと思います。一番のおすすめはドロッパーポストですけどね!