初心者の皆様がご購入されたマウンテンバイクでより楽しく快適に、そして上手に乗りこなせるようになるための「ポジション設定の基本」をご紹介するページ。こちらはその「ブレーキレバーのセッティング編」です。ちょっとセッティングを変えるだけで劇的に乗りやすくなるかも?
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ロードバイクのフィッティングでは、身体とペダル、サドル、ハンドルの3つの接点の位置関係を自分自身の身体に最適化することで、ほぼ同じ姿勢で長時間サドルに座り続け、長距離ペダリングし続けられるようにします。いわば静的なライディング向けのセッティングとでも言いましょうか。
一方マウンテンバイクの場合は、動的なライディング向けのセッティングになってきます。腰を浮かしながら、身体を前後左右、上下に大きく動かしながらでないと走れないような激しい悪路を走行するマウンテンバイクライドでは、ハンドル、ペダルの2つの接点の状態が安全なバイクコントロールにとっても影響するのです。
中でも、ハンドルを握る手は路面状況やバイクの挙動を正確に把握し、乗り手の意図を正確にバイクに反映させるための重要な役割を担っているわけです。そういう意味ではハンドルの幅や角度などのポジションだけでなく、グリップとレバー類の間隔、そして角度のセッティングやレバーのリーチも重視すべきセッティングと言えるでしょう。
ということでここでは、レバーの角度、リーチ、グリップとの間隔について詳しくご紹介したいと思います。
レバーの角度
ブレーキレバーの角度のセッティングは、「手首に負担のない角度」にセッティングするという考えが基本中の基本となります。手の甲が著しく進行方向を向いたり、逆に激しく顔の方を向いたりしないような位置です。初心者の方はまずはニュートラルなポジションでペダリングをしているときに、ハンドルを握った手首が自然な角度、負担のない角度にセッティングしましょう。手首、肘、肩の可動域を大きく確保できます。
ずっとこのセッティングでも間違いではないですが、マウンテンバイクライドを重ねていく中で、もっとこうしてみようなどという考えが浮かんできたりしたら、それを試してみたりするのが良いでしょう。レバー類はすぐに微調整ができるのでライドの最中にいじってみてもいいかもしれません。
マウンテンバイクを購入してから、富士見パノラマやスマイルバイクパークなどのパークライド、里山トレイルライドに出かけると、そもそもどの姿勢がニュートラルなのかきっと迷宮入りすることでしょう。サドルのセッティングの時にもお話した通りバイクの上で立ち上がって様々な姿勢をとるマウンテンバイクの場合、どのポジション取りがその瞬間ニュートラルなポジションなのか、走るコースの勾配や速度、さらには重心の好みや癖が後ろ乗り気味なのか前乗り気味なのか…などによっても変わってくるものなんです、特に初心者は。
…ではどーするか?ということで基本的な考え方を、ブレーキレバーの角度の違いによる変化を写真を見ながらご紹介していきます。
レバーの角度
基本的なブレーキレバーの角度
オンロードや林道などサドルにシッティングしてペダリングすることがメインになるライドでは、漕ぎやすいサドルの高さでのシッティングポジションで、手首が変に曲がることなく自然になるようにセッティングするのが良いでしょう。
初めてのマウンテンバイクならば最初はこのセッティングからスタートするので構いません。
レバーの角度
水平に近いセッティング
高速で走り抜ける下り系のパークや、重心を後ろ気味で乗るのが得意な方や、激しい下りが楽しいトレイルなどでサドルを下げて乗る方は、こちらの写真のようにレバーを浅めに起こす(地面に対して水平方向にあげる)セッティングを試してみましょう。
その方が、伏せた上体でバイク後方から腕を伸ばしハンドルを握っているときに、腕と手を自然な角度にできるのです。
また、親指と人左指のV字部分でハンドルをしっかりと進行方向に押し引っ掛けておくことができるので、ハンドルを前方に押し出しやすくなったり、前方に吹っ飛ばされにくくなったり、ハンドルから手がすっぽ抜けにくくなったりもします。
レバーの角度
垂直に近いセッティング
重心が前乗り気味の乗り方が好きな方は、次の写真のようにレバーを少し下げて(地面に対して立ち気味に)する方が良いでしょう。低速でスタンディングの練習をしたりする場合は立ち位置も前よりになり上体も起きた姿勢になるので、レバーは立ち気味の方が圧倒的に操作しやすいです。
ただ、この写真がまさにそうなのですが、サドル後方からハンドルを握るような姿勢の場合は逆に、手首に負担がかかりやすいのでやめた方がいいでしょう。手首に大きな負担がかかるだけでなく、肘や腕の可動域が制限されるため体全体を使いにくくなります。
また、ハンドルの抑えが効きにくくなるので、重心がついつい前に移動しすぎてしまったり、急な下りのドロップオフなどで前に吹っ飛びやすくなったりもします。
いずれにしても、ライディングを楽しみながら微調整を繰り返し、自分のライドにピッタリのセッティングを見つけることを楽しむのがよいでしょう。ハンドル幅とステム長も含めて考える必要はありますが、レバーの角度をちょっといじるだけで手首の負担が減り、腕だけでなく身体全体の可動域が格段に広がり、バイクをより制御しやすくなるのがお分かりいただけると思います。
レバーのリーチ
人差し指一本だけでも確実に制動できる油圧ディスクブレーキレバーのほとんどに、ハンドルグリップからレバーまでの間隔(リーチという)を調整できるような機構がついています。
基本的なリーチセッティングは、無理なく自然に人差し指をかけられるくらいの位置、自然に指が曲がっているくらいのセッティングを目指しましょう。
好みによるところが大きいですが、NGセッティングは明確です。指先しか触れないほど遠すぎるセッティングや、レバーを握った時にグリップを握っている他の指を潰してしまうくらい近づけてしまうのはNGです。フルブレーキをかけた時にレバーがグリップにコンタクトしてしまう状態も絶対に避けましょう。NGセッティングを写真で早速みていきましょう。
レバーのリーチ
ギリギリセーフ?にも見えるけど遠すぎるのはNG
リーチが遠すぎるセッティングではギリギリ指は届いているけれども、必死に指を伸ばそうとする力が発生してしまいます。
人間、人差し指を曲げるときは第二関節を曲げずに第一関節だけを曲げることはまずできないので、第二関節から自然に曲がって自然に指がレバーにかかる方がよいでしょう。
レバーのリーチ
リーチが近くて中指に干渉してしまうのもNG
ブレーキをしっかり効かせようと思いレバーを握った時に、中指にレバーがあたってしまうのも避けましょう。痛いだけでなく、もっと効かせたいのにそれ以上深く握りこむことができません。
レバーのリーチ
リーチが近すぎて握るとグリップに当たってしまうのは超危険なのでNG
ブレーキレバーを強く握った時にグリップにレバーが当たってしまうセッティングも避けましょう。リーチが近すぎです。中指に当たってしまう状態よりも危険なセッティングです。
レバーのリーチ
丁度いいレバーのリーチは?
どの程度のリーチで微細な制動コントロールがしやすいのかは、実際のところ個人差や好みによるものが大きいです。
例えば、電車のつり革を握るときに指先で握るのが疲れにくいか、指の付け根側でガッツリと握るのが疲れにくいのか、ショッピングバッグを指先にかけて持つのが好きなのか、しっかりと握って持つのが好きなのか、ゴルフのグリップを小指側から斜めに握るのが好きなのか、と同じと言えるかもしれません。
また、硬いものを包丁で切る時にガッツリと握り、あまり硬くないものを細かく繊細に切る時は斜めにソフトに握ったりするような感覚と同じで、ハンドルから伝わってくる衝撃の大きさや速度域によってもグリップの握り方や握る場所が変わったりもします。
とても複雑ですがいずれにしてもライドを繰り返しながら、レバーに違和感なく指を掛けていられるリーチで、尚且つ、制動の微調整とフルブレーキの両方やりやすいセッティングを見つけていくしかありません。しっかりと時間をかけて好みのリーチセッティングを見つけましょう。
余談ですが...
パッドが減ってもパッドコンタクト位置(リーチ)に変化が出ない油圧ディスクは最高
ワイヤー引きのVブレーキ時代には、フルブレーキをかけた時のフレームのたわみや、長い下りで徐々に減っていくのがわかるブレーキシューのすり減りなどにより、レバーを握った時のパッドコンタクト位置がどんどんと深くなってきてしまうため、リーチを普通もしくは遠目にセッティングする方が好まれました。
しかしながら、遠いレバーをずーっと握り続けると、握っている指も含めて手そのものが疲れやすい傾向にあったように思います。
指一本で制動できる油圧ディスクブレーキ、パッドがすり減ってもパッドコンタクト位置が変わらない油圧ディスクブレーキ、やっぱり最高ですね。
レバーの取り付け位置
リーチと同様に重要なのがグリップからどれだけ内側にブレーキレバーをセッティングするか?です。
最近の油圧ディスクブレーキレバーのほとんどが、人差し指一本で操作するような設計になっているため、レバーを適切な位置に固定すれば、レバーを握った時に中指薬指に干渉しない位置にセッティングできるようになりました。写真で見ていきましょう。
レバーの取り付け位置
グリップからどれくらい距離を離して固定するか?
最近の油圧ディスクブレーキレバーのほとんどが、人差し指一本で操作するような設計になっているため、レバーを握った時に中指薬指に干渉しない位置にセッティングできるようになりました。
なので、グリップからどれだけハンドルの内側にレバーを固定するのかが、重要なセッティング項目になっています。握っても中指にもグリップにも干渉していない状態の写真です。かなりグリップから遠い位置に固定されています。
レバーの取り付け位置
ナイスなセッティング
中指にレバーがぶつからない位置までグリップからレバーを遠ざけて固定するのがオススメです。支点からもっとも遠い位置でレバーを操作できるので、強く握るのも効率がいいですし、微妙な強弱も調整しやすいです。
リーチが適切に設定されていればもちろん強く握ってもグリップにレバーが当たることもありません。
次の写真のセッティングでは、レバーのテコも活かしきれないし、他の指に干渉してしまいます。
レバーの取り付け位置
NGセッティング
グリップに近い位置にレバーをセッティングするのはNGです。
レバー位置は、ハンドルグリップのどのあたりを握るのが好みなのか、によっても変わってきますので、こちらも気にしながら乗り込むと良いでしょう。
私はグリップの外端に小指が乗るくらいの位置で握るのがなんとなく好きです。グリップの真ん中辺を握っているのか、それとも外側気味なのか、最初のうちはその辺も気にしながらマウンテンバイクライドに出かけると良いでしょう。
ただ、モデルによってはワンフィンガーで操作できるようにレバー位置を決めると、シフターに指が届かなくなってしまうというモノも存在します。その場合は正直あまりいいセッティングはできないので、思い切ってパーツをアップグレードするのがよいでしょう。店舗スタッフにご相談ください。
私は、ブレーキレバーとシフトレバー、ドロッパーのレバーのタッチや位置関係にちょっと神経質です。たまにしか本格トレイルに出かけられないのに、その最中にブレーキングやシフティングに煩わしさを感じていてはせっかくのトレイルライドを全然楽しめないので、全部SRAM EAGLE AXS(ワイヤレス電動変速)化しています。バイクコントロールのしやすさへの投資はプライスレスです。
最後に
以上がマウンテンバイクのブレーキレバーのセッティングに関する基本的な考え方になります。六角レンチやトルクスレンチがあれば簡単にブレーキレバーやシフトレバーの位置は動かすことができますので、色々とセッティングを変えて、トレイルでダイナミックにバイクをコントロールできるレバーセッティングを探してみてください。
また、レバーの握りやすさやハンドル幅が関係している場合もあるのでそちらも頭の片隅に入れておくと良いでしょう。