そもそもサスペンションてなんのためについてるの?という素朴な疑問をまずはクリアにし、その後、サグ、リバウンド、コンプレッション等の基本セッティングについてご紹介したいと思います。
フルサス
全て見るサスペンションの役割ってそもそもなに?
サスペンションには大きく3つの役割があります。1つ目の役割はライダーに伝わる路面からの衝撃や振動を和らげ疲れにくくすること。2つ目の役割は路面の凹凸に弾かれてタイヤ(自転車)が宙に浮いてしまうのを避けること。3つ目の役割は自転車がバタつくのを抑え視線を安定させること。それぞれもっと掘り下げてご紹介します。
サスペンションの役割 その1
ライダーに伝わる路面からの衝撃や振動を和らげ疲れにくくする
マウンテンバイク向きのコースでは路面の凹凸や木の根、岩肌で、大小様々な衝撃と振動がタイヤからハンドルとペダル、サドルを通じて体に伝わってきます。舗装路や整地された道路しか走ったことのない方からしたら全く想像もつかないほどの衝撃と振動です。
サスペンションがその衝撃と振動を減衰してくれるので、変に力んだり、オーバーに体全体を使って振動を吸収させる必要がないのでとってもラクなんです。
サスペンションの役割 その2
路面の凹凸に弾かれてタイヤ(自転車)が宙に浮いてしまうのを避ける
サスペンションのないマウンテンバイクで、ある程度の速度で走行していると木の根や岩肌の激しい凹凸にタイヤが弾かれてタイヤ(車体)が宙に浮いてしまいます。ライド中にゴムボールのように路面の凹凸に呼応する形でタイヤが弾むのを繰り返してしまうと自転車の上でどんな操作をしようが何も反映されません。
タイヤが接地していないと、ビビって減速しようにもブレーキが効かない。パニックになりブレーキをロックさせタイヤの転がりを止めてしまうとさらに弾んでしまう。タイヤが接地していないとハンドルを操作して曲がることもできない。曲がろうと思って車体を傾けても弾みながらコーナー外側に流されていくだけ。タイヤが接地していないと、漕いで加速することもできない…。
タイヤが宙に浮いてしまうということはつまり、アンコントローラブルな危機的状態ということです。ロードバイクで普通にサイクリングしていると全く気にすることはありませんが、ロードバイクでもタイヤがグリップを失い滑ってしまう(浮いてしまう)とヤバイですよね。タイヤを地面にしっかりとくっつけておくことは、とても重要なことなんです。悪路で自転車を思い通りにコントロールしライドを楽しむには、サスペンションを機能させしっかりとタイヤを地面に接地させておかなければならないんです。
サグ調整、コンプレッション側減衰調整、リバウンド側減衰調整などの細かいことを抜きにして言うと、トラベル量が大きければ大きいほど路面の凹凸を舐めるように通過できるといっても間違いではありません。
サスペンションの役割 その3
自転車がバタつくのを抑え視線を安定させる
絶え間なく続く路面からの激しい衝撃や振動が、タイヤからハンドル、ペダル、サドルを通じて体に伝わってくるのですが、それを体に伝わる前にサスペンションが減衰し、タイヤを接地させバイクを自分のコントロール化に置いてくれることで、身体が激しく揺さぶられることもなく、また極度に緊張したり焦ったりすることもなく、比較的リラックスした状態でいられるため、頭のブレ、視線のブレがとても少なくなります。
視線のブレが少なくなると、次にやってくる路面の状況を先手先手で把握できるようになります。安定した視線から入手した正確な路面状況を常にバイクコントロールに反映できるため、荒れた路面でも安全に走行できるんです。
エアサスペンションの基本的なセッティング方法
マウンテンバイクのエアサスペンションフォークやリアサスペンションユニットには、サスペンションのグレードにもよりますが、いくつか調整できる機能があります。
①サグ調整、②ダンパー調整(リバウンドの減衰調整)、③ダンパー調整(コンプレッションの減衰調整)、④ダンパー調整(ハイスピード・ロースピード別のコンプレッション減衰調整)、⑤ロックアウト機能、など。
マウンテンバイクを購入したらまず調整しておくべきなのが①サグの調整です。あとは値段に比例する形で調整できる項目が増えてゆきます。
伸び側のダンパー機能の強弱を調整する②リバウンド減衰調整(赤いダイヤル)、縮み側のダンパー機能の強弱を調整する③コンプレッション減衰調整(青いダイヤル)などです。
さらにハイグレードなものになると、サスへの入力速度の違いでコンプレッションダンパーの働き方を調整できる機能がついたものもありますが、これはペダリング時の踏み込みパワーでサスペンションが縮んでしまい漕いでいる力が無駄になるのを抑制するための機能と考えて差し支えありません。
フォーク右側下にある赤いダイヤルがリバウンドダンパーの調整
フォーク右側上にあるのがコンプレッションダンパーの調整ダイヤル
リアサスも赤がリバウンド、青がコンプレッション
①サグ調整
サグ調整とは?
サグ調整とは、大きなギャップがないような路面で普通にスタンディング状態で乗車しているときに、あらかじめ沈ませておくべき量を調整することです。サスペンションをあらかじめ沈ませておくことで、路面の小さな凹凸でもスムーズにサスペンションが伸びたり縮んだりし振動を吸収してくれるのです。
凹面に侵入した際には、サスが伸びることでタイヤを接地させておいてくれます。抜重して少し車体が浮いてしまった時や、コーナリングで横滑りしてしまった時などにも、フォークが瞬時に伸びることでタイヤのトラクションが抜けてしまうのを防いでくれたりするわけです。
最近のサスペンションにはこのようにわかりやすいメモリがついていることも多いです。
①サグ調整
エアサス専用空気入れでエア圧を調整
コイルバネを搭載している安価なモデルの場合は、プリロードと呼ばれるダイヤルを回すことで調整ができます。エアスプリングを採用したサスペンションフォークには体重ごとの推奨エア圧の一覧がフォークに貼り付けてあったり、インナーチューブにあらかじめサグの推奨ラインが記されていたりしますので、そちらに合わせてエア圧を調整しましょう。サスペンションのエア圧の調整はタイヤ用ではなく専用の空気入れが必要です。
また、当店で取り扱っているTREKのマウンテンバイクの場合、サスペンションセッティング用のアプリサイトがネットで公開されています。そのサイトで、年式、モデル、体重を入力するとベースとなるエア圧やダンパー調整の数値が一瞬で表示されます。
①サグ調整
サグの目安
メーカーによって推奨値の細かな違いこそあったりしますが、基本的にショートストロークのサスペンションは10から20%、ロングストロークのサスペンションは25%から35%程度、その中間的なサスペンションであれば20から30%の範囲と考えてほぼ差し支えありません。が、気になる方はそれぞれのメーカー推奨値をご参照ください。
ショートストロークなら・・・10-20%程度
ロングストロークなら・・・25-35%程度
中間的なストロークなら・・・20-30%程度
最近のサスペンションはインナーチューブにサグの目安が印字されているものも多いのでわかりやすいでしょう。ちなみに高速で走れるライダーほど特にフロントは硬めにセッティングする傾向にあります。
①サグ調整
サグの調整方法
サグの調整は2名、ないし3名で行うのがよいでしょう。
2名でやる場合は、自転車が直立に近い角度でハンドルだけ壁に立てかけ、もう1名(そのバイクにライドする人)がスタンディング状態で乗車します。3名でやる場合は、バイクを壁に立てかけるのではなく、1名が前輪を股に挟んでバイクを自立させて行います。左右に倒れてしまいそうであれば、ハンドルに手を添えて倒れないようにサポートしましょう。その際、ハンドルに荷重をかけないように注意してください。おそらく少しやっているうちに抑える側も乗る側も慣れてくるハズです。
その状態で、何度かペダルに荷重をかけ意図的にサスペンションをストロークさせ、再びニュートラルなスタンディング姿勢をとります。そしてもう1名がどれだけ沈み込んだのかを確認します。サスペンションのインナーチューブにはゴムの輪っかがついていますので、それをインナーチューブ根本まで移動させ、そっと自転車を降ります。降りる時にサスペンションがより深くストロークしてしまうこともあるので、ゴムを移動させた段階で真横からスマホで撮影しておくのもおすすめです。サスペンションが伸び切った状態からその輪っかが何割程度沈んだところになっていたのかを見れば、どの程度サグを取れているのかがわかります。
実際にライドに出かける時の体重と身につけている装備の総重量でサグを調整するのが一番理想的ではありますが、あまり神経質にならなくてもよいでしょう。先にご紹介したTREKのサスペンションセッティングアプリを使う場合は、体重だけでなく装備の重量も加味して入力すればOKです。
②リバウンド調整
ダンパーとは?
サスペンションは基本的にスプリングとダンパーで構成されています。振動や衝撃が加わった時にバネが縮むことで振動や衝撃が吸収されて乗り手に伝えにくくしてくれるわけですが、スプリングだけではボヨンボヨンと弾んでしまいなかなか素早く衝撃や振動を減衰してはくれません。そのためショックアブソーバー(振動減衰装置=ダンパー)としての機能が備わっているわけです。
ダンパーには、サスペンションが縮んでから伸びる時(リバウンド時)のスピードを遅くしてくれる機能と、沈み込む時(コンプレッション時)のスピードを遅くしてくれる機能があります。知る限り市販されているほぼ全てのサスペンションで、赤いダイヤルがリバウンド側のダンパーを調整するモノ、青いダイヤルがコンプレッション側のダンパーを調整するモノとなっています。
ちなみにリバウンドダンパーはどのレベルの乗り手にとってもと重要な役割を果たしてくれますので、初心者の皆さんも、強めにかけた時のバイクの挙動と弱めにセッティングした時の挙動を実際に体験しておくといいかもしれません。
②リバウンド調整
リバウンドダンパーの役割
リバウンドダンパーはサスペンションが伸びる時のスピードを遅くするという役割を担っています。もしリバウンドダンパーが効いていないと、ぎゅっと縮んで衝撃を吸収したはずの力で伸びてしまい、勢いよく伸びることによって結果的に衝撃をライダーに伝えてしまいます。また、凹面に侵入した際にもサグ分で沈んでいたはずのサスペンションが瞬時にトップアウトしてしまいます。それでは身体にもサスペンションにも優しくありません。
TREKのサスペンションカルキュレーターアプリのRebound欄に表示される指示に従い赤いダイヤルを回せば、基本的なセッティングはすぐに完了します。実際のところは速度域やライディングの巧さによってもセッティングは変わってくるものでもありますが、初心者の方や速度を競っていないファンライダーの方々もこの基本セッティングで不満を感じることはまずないでしょう。ただ、頭の片隅にほんのちょっとだけサスペンション知識を入れておくとさらにライドが楽しくなると思いますので、基礎的なことをご紹介しておきたいと思います。
②リバウンド調整
リバウンドダンパーが(弱すぎる)速すぎると
特にリアサスペンションのリバウンドが速すぎると危険です。後ろからの突き上げが強くなる傾向があり、バイクを跳ねあげられえられるような感覚になりやすい傾向があります。急な傾斜の下りにある大きめの落差を降りる時に、一度ぎゅっと沈み込み衝撃を吸収してくれたはずのサスから、今度は逆に激しく跳ね上がれてしまい前転してしまうことも(笑)
コーナリング直前にしっかりと荷重を掛けて沈み込ませておいたフロントサスが、コーナー中に速く伸びてしまうと、タイヤにかけていた荷重が抜けてしまうので、グリップを失ってしまうこともあります。前輪グリップが横方向に抜けてしまった時には瞬時に伸びてくれると助かるのですが。。。
②リバウンド調整
リバウンドダンパーが(強すぎる)遅すぎると
リバウンドが遅すぎると、サスペンションが伸びることによる突き上げはなくなりますが、サスペンションがニュートラルな位置に戻ってくるまでの時間が長くなってしまいます。次にやってくる衝撃を吸収する準備が整っていない状態が長引いてしまうというわけです。これがリアで起こると、どんどんとサスが沈み込んでいき、フルボトムした状態、もしくはそれに近い状態で走行することになってしまい、衝撃や振動が身体に伝わり視線がブレブレになってしまったり、バイクがバタつきグリップを失ってしまったりと、いいことありません。
ちなみにフロントサスペンションのリバウンとが遅すぎる場合はもっと悲劇的です。サスペンションが縮んだ状態になればなるほど、ヘッド角が立ったような状態に陥り、前傾もキツくなってしまいます。ダウンヒル中にこれでは、次の衝撃を吸収できなくなるどころか、普通ならなんの問題もなしに通過できるはずの木の根やちょっとした岩の出っ張りに侵入しただけで引っ掛かり前転に繋がってしまいうのです。
②リバウンド調整
リバンドダンパーの適切なセッティングは?
細かな衝撃を身体でいなすのが苦手なのか、大きな衝撃を身体でいなすのが苦手なのかといった個性や、速度、荷重抜重のテクニックなど、結局のところ乗り手によって最適な調整は違ったりはするのですが、一般論として、リアの場合はリバウンドが速すぎると危険度が増し、フロントの場合はリバウンドが遅すぎると危険度が増す、というわけです。
おすすめのセッティングは、フロントは遅すぎず、リアは速すぎず…です(苦笑
試したことはありませんが、前後サスがニュートラルな状態に戻るタイミングが大きくズレているとかなり乗りにくそうですよね(笑
②コンプレッション調整
コンプレッションダンパー2つの役割
コンプレッションダンパーは、サスペンションが縮む時のスピードを遅くする役割を担っています。コンプレッションダンパーの調整機能はエントリーモデルにはほとんど搭載されていません。ミドルからハイエンドなモデルに限られています。リバウンドダンパーと比べると多くのライダーにとってあまり重要ではない機能と言えますが、あったほうがより疲れずに効率よくライドできるようになる機能とも言えるような…そんな機能です。主な役割を2つご紹介します。
フルボトムを避ける役割
一気にフルボトムしてしまうほどの衝撃の全てをスプリングに伝えないようにすることで、フルボトムを避けること。フルボトムを避けることで、サスペンションそのものとバイク自体の破損を予防し、フルボトムするほどの激しい入力でサスペンションが吸収しきれなかった大きな衝撃をなんとか粘って減衰すること。
大きな落ち系のジャンプの着地時にフルボトムしてしまうと、全身でそれを受け止めなければならず、姿勢を崩すだけでなくバイクに体を叩きつけられ、ペダルから足は外れ転倒、大怪我につながる恐れがあります。さすがにそこまで激しく飛ぶことはないと思いますが(笑
ペダリング時のロスを減らす役割
ロングストロークサスペンションはどうしてもボヨンボヨンとしてしまいペダリングロスが大きく、登り下りを繰り返すトレイル、長い下りがあるけど長いペダリングセクションもあるようなコースには不向きだったのですが、コンプレッションダンパーの調整ダイヤル(青)のお陰でペダリング時の不必要なストロークを抑制することができるようになり、さまざまなコースをよりラクをして楽しめるようになったのです。
サスペンションがストロークすることを抑制するロックアウト機能が搭載されているエントリーモデルもありますが、3段階程度のコンプレッションダンパー調整機能、ゆっくりな入力の際には深くストロークしないようにできる機能(ロースピードコンプレッション)が、ミドルからハイエンドなモデルには搭載されています。
XC系からトレイル系だけでなく、エンデューロ系のライドでもペダリングセクションが多くあるので、この手の機能が搭載されたサスペンションだとさらに楽して速く走ることができるでしょう。ロックアウト機能があるだけでも随分とペダリングセクションがラクになります。
コンプレッションダンパーの切り替えができるモデルをお使いなら、ペダリングを重視したい時とスコスコストロークしてほしい時とで使い分けるといいでしょう。