XCレースの下のロックセクションのドロップオフを降りているヨランダネフ選手の写真
うーん、悩ましい。

マウンテンバイクの丁度いいハンドル幅何を基準に考えればいいの?

What is the right handle width of MTB?

悩ましいマウンテンバイクのハンドル幅について掘り下げて考えていきたいと思います。先にお断りしておきますが、これだ!!という明確な答えにはたどり着いていません。そもそも答えは人それぞれです。ご自身のハンドル幅を決める上での参考になれば幸いです。

はじめに

600mmに満たないハンドル幅しかなかった時代を知る者として、最近のマウンテンバイク完成車に標準でついてくる超ワイドハンドルには驚きを隠せません...

トラックの後ろに車載されたeMTB。遠くに雪が残る岩山を臨む写真

MTBハンドルワイド化の背景

タイヤ性能の向上、サスペンションの誕生とストローク量の増加、フレームやホイール、ブレーキなどのパーツ性能の進化——こうした変化によって、マウンテンバイクは誕生当初の1970年代と比べ、格段にラフでワイルドな地形を走れるようになった。現在では、当時では想像もつかなかったようなテクニカルな路面も、安全かつ楽しく走破できるようになっている。

この高性能化の流れの中で、フィッティングの考え方や流行のジオメトリーも大きく変わってきた。そして、ハンドル幅のワイド化にも深く関係しているのが、1980年代のサスペンションの誕生とストローク量の増加、そして21世紀初頭のホイールサイズの大径化だ。この2つが、現在のMTBのハンドル幅にどう影響を与えたのか、さらに掘り下げて考えてみよう。

ワイドハンドル化の背景1

サスの誕生とロングストローク化

広いハンドル幅のフルサスマウンテンバイクを操る女性ライダーの写真

ワイドハンドル化の背景2

ダウンヒルバイクの進化とXCへの影響

ロックセクションを下るヨランダネフ選手の写真
フルサスマウンテンバイクでトレイルを下る女性ライダーの写真。前輪の真横からアップで撮影。

ワイドハンドル化の背景3

ホイールの大径化

コーナーで後輪を滑らせて落ち葉が巻き上がっている様子

ホイールの大径化とワイドハンドルの関係

ワイドハンドル化のメリットとデメリット

サスペンションストローク量の増加とホイールの大径化に呼応してハンドル幅もワイド化してきたわけですが、ワイドハンドルにはメリットだけでなくデメリットももちろんあります。

ワイドハンドル化のメリット

細いトレイルで巧みにMTBを操っている様子

1. コントロール性が上がる

マウンテンバイクのハンドルがワイド化してきたのは、機材の進化に伴う必然的な流れだ。そして、その最大のメリットはコントロール性の向上にある。

特に、トレイルバイクやオールマウンテン、エンデューロ系バイクはもちろん、XCバイクにとっても、ラフでテクニカルな路面での操作性を向上させるという大きな利点がある。

狭いハンドルよりも広いハンドルの方が「テコの原理」が強く働くため、前輪が暴れにくくなり、より安定したライディングが可能になる。また、狙ったラインにフロントホイールを正確に通すためのコントロール性も格段に優れている

特に、ガレ場や根っこが張り出したセクション、タイトなスイッチバックなどでは、ワイドハンドルの恩恵を実感しやすい。ハンドル幅が広がることで、前輪を意図した通りに動かしやすくなり、よりスムーズかつ安定した走行ができるのだ。

胸と腕にゆとりがある状態の写真

2. 呼吸が楽(な気がする)

ワイドハンドルには、操作性の向上だけでなく、「呼吸が楽になる」という意外なメリットもある。

MTBが大ブームだった時代、メッセンジャーの中には狭いハンドルを好む人が多かった。車の間をすり抜けるようなライディングでは、ロードバイク並みにコンパクトなハンドルの方が取り回しが良かったからだ。ところが、そうしたライダーの中にも、「ワイドハンドルの方が呼吸がしやすい」と感じる人がいた。

実際に何かの実験でデータが示されているかどうかは分からないが、確かに肩幅より狭いハンドルを使うと、胸が窮屈になり、息が苦しく感じることがある。逆に、ワイドハンドルの場合は胸郭が広がり、より多くの酸素を取り込める気がする。

ひたすら漕いでいるとき、「ワイドハンドルの方がラク」と実感するのであれば、それも十分メリットとして考えてよさそうだ。

3. 安定感が増す

ワイドハンドルは、重心が安定しやすく、バイクのふらつきを抑えられるというメリットがある。特に、高速域や荒れた路面では、安定感が大きく向上する。ハンドル幅が広がることで腕のポジションが広くなり、体のブレを抑えやすくなるのもポイントだ。

たとえば、下りでスピードが出ているときや、岩や根っこがゴツゴツしている場所を走るとき、狭いハンドルだと少しの振動や衝撃でハンドルが取られやすい。しかし、ワイドハンドルならば、より大きな動作でバイクをコントロールできるため、安定して走ることができる。

4. 下りでのリラックス効果

ハンドル幅が広いと、ライディング中の姿勢が自然と腕を開いたリラックスしたフォームになる。特に下りでは、肘を軽く曲げた状態をキープしやすく、腕や肩に余計な力が入りにくくなる。

狭いハンドルだと、どうしても肩が内側に入ってしまい、腕や上半身に負担がかかりやすい。長時間のライドでは、この差が疲労の大きさに直結する。ワイドハンドルなら、体の力を抜いてバイクの動きに合わせやすくなり、長時間のダウンヒルでも疲れにくいのだ。

5. 低速でもバイクを安定させやすい

ワイドハンドルのもうひとつの意外なメリットは、低速時のバイクコントロールがしやすくなること

たとえば、テクニカルなセクションでのトライアル的な動きや、急な登りでのバランス維持、さらには押し歩きのときの扱いやすさにも影響する。狭いハンドルでは細かい調整が難しくなり、バイクがふらつきやすいが、ワイドハンドルなら安定感を保ちやすい。

ワイドハンドル化のデメリット

木々が茂っている林間部のトレイルを慎重に下るマウンテンバイカーの様子

1. 場所によっては邪魔になる(経験者は語る)

1998年から2000年頃、富士見パノラマのダウンヒルコースに通っていたときのこと。当時、愛車はお金がなくてXCバイクだったが、思い切って720mmか740mmのライザーバーを取り付けた。ところが、その直後に電柱にハンドルを引っ掛け、オデコを強打。血が滲むという悲惨な経験をした

ラフなダウンヒルコースでのワイドハンドルのコントロール性の良さを実感する前に、「狭い場所では邪魔になる」という事実を身をもって体験することになった。メッセンジャーが狭いハンドルを好むのも納得だ。

それにしても、ヘルメットは大事。しっかり被りましょう(苦笑)。

また、木々が立ち並ぶシングルトラックでは、ワイドハンドルが障害になることも多い。狭いトレイルを抜ける際、ハンドルが通り抜けられるかどうか瞬時に判断しなければならず、その分、目線がブレたり、躊躇したりしてタイムロスに繋がることがある。それどころか、引っ掛けて大転倒するリスクもある。

特に、日本の背の高い木々が生い茂る山岳トレイルでは、超ワイドハンドルは不向きな場合もある。ゲレンデやパークの専用コースとは違い、自然の中を走る際には、ハンドル幅に注意しなければならない。

また、XCレースのスタート時の混戦や、追い抜きの際にも注意が必要。ワイドハンドルは距離感が昔とは全く違うため、接触のリスクが高まる。狭いハンドルに慣れているライダーほど、この違いを意識しておくことが重要だ。

手首に負担のないハンドルの広さと近さが見て取れるイメージ写真

2. 小柄な方や肩幅が狭い方は特に手首に無理が生じる

ワイドハンドルは多くのメリットをもたらすが、小柄なライダーや肩幅が狭いライダーには適していない可能性がある。ハンドル幅が広すぎると、腕を必要以上に開くことになり、特に手首に大きな負担がかかる

ハンドル幅が合っていないと、ライディング中に手首の角度が不自然になり、長時間のライドで疲れや痛みを感じやすくなる。また、可動域が制限されることで、バイクをスムーズにコントロールしにくくなる。

ワイドハンドルを選ぶ際は、自分の骨格や関節の可動域に無理のない範囲で調整することが大切。写真の女性のように、腕や手首に無理のないポジションでライディングできるよう、適切な幅を見極めることが重要だ。

特にXCや長距離ライドでは、ハンドルが広すぎると疲労が蓄積しやすくなるため、乗りながら微調整し、自分に合った幅を見つけるのがベストだろう。

ハンドル幅を変えようと思った時の注意点

ハンドル幅を変えようと思った時にどんなことに注意しておけばよいのか? にも軽く触れておきます。

ステムの長さとのバランスも考えよう!

撮影者本人のハンドルステムと前を走行するライダーの写真

XC系バイクでくだりやタイトなターンをより楽しみたい場合は…

幅の広いハンドルと短めのステムの写真

ワイドハンドルはカットすることで好みの幅に調整できる!がしかし…

広いハンドルでしっかりと前輪をグリップさせながらコーナーを曲がるマウンテンバイクの様子

結局のところMTBの適正なハンドル幅は???

最近の完成車にワイドハンドルがついて来るようになったのは前述のような背景やメリットがあるからです。

実際2020年の市販のXC系マウンテンバイクの多くに740mmや720mmのハンドルが標準でアッセンブルされていることが多いようですが、ネットに転がっていた情報によると、世界で活躍しているプロXCライダーには680mmや700mmといった現代の完成車の主流よりもやや狭めのハンドルを使っている人もそれなりにいるのだとか。

スラッシュやレメディなど、くだり色が強いモデルになるにしたがって完成車に標準でついてくるハンドルはさらにワイドなタイプになっていきます。

結局のところ...

ハイライズハンドルの魅力

ハンドルの操作性に影響するのは幅だけじゃないことも忘れずに

ブレーキレバーセッティングの基本
青い空、白い雲、緑の山をバックに、ダウンヒルの最中に高くジャンプするマウンテンバイクの写真。
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