Shimano Di2を再び使う気になった理由

かつてShimano Di2に失望し、Sram Eagle AXS、そしてT-Typeを乗り継いできた私ですが、ついに再びShimano XT Di2 M8250へと戻ってきました。あのとき感じた失望や、その後のAXSの利便性、T-Typeの堅牢さを経て、今改めて感じるのは、やはりシマノの変速には特別な魅力があるということです。
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はじめに:シマノへの信頼の崩壊
EXAGEシリーズを使っていた私がDeore XTを初めて購入したのが1990年高校一年の春のことでした。当時画期的だったラピッドファイヤーの初号機M735シリーズです。ハンドルを握ったまま親指だけで変速できるようになったのが最高でした。
Di2のXTを導入したのは2017年ごろのことでした。精密でスムーズな変速性能、そして信頼性の高さに強く惹かれたのを今でもよく覚えています。せっかくの電子制御なのに、ワイヤー引きのラピッドファイヤーに似せたストローク感は正直あまり好きではありませんでしたが、当時の私は、Di2こそが次世代の変速システムだと本気で思っていました。

ある日のことです。富士見パノラマへライドに出かけるという若手スタッフにバイクを貸し出したところ、後日、彼が神妙な面持ちで帰ってきました。どうやらシフターのクランプ部分を地面に強打し、シフターが全く反応しなくなってしまったとのことでした。
問題は、当時のDi2がクランプ部分に電気系統(電子基板?)が内蔵されており、それを樹脂カバーで覆っている程度の構造だった点にありました。通常のラピッドファイヤーであれば、たとえクランプに衝撃が加わっても変速そのものが不能になることはないはずです。しかし、この構造ゆえに、衝撃で致命的な電子的故障を引き起こしてしまったのです。
あの一件で、元々ワイヤー引きの操作感に似せてあるシフターにやや残念な思いがあった私は、シマノのDi2に対する絶対的な信頼を失いました。そして、「構造の合理性」に重きを置いた他の選択肢(転倒時に壊れにくいコンポ)を、真剣に探し始めるようになったのです。
SRAM Eagle AXSとの出会い:新たな信頼
シマノDi2への信頼が揺らいでいた私は、他のスタッフからの勧めもあり、SRAMのEagle AXSに徐々に関心を持つようになりました。それはたしか2019年のことだったと思います。ちょうどその頃、SRAMアジア地域のマーケットマネージャーであるIan Wangさんが所沢店を訪れ、製品哲学や技術思想について色々とお話を聞かせてくださいました。

それまでの私は「SRAM=安かろう悪かろう & 高いやつは高かろう悪かろう」という先入観を少なからず持っていたのですが、その日の対話を境に、その印象は一変しました。Eagle AXSシステムに対する理解が深まり、同時に開発思想の裏側にも触れたことで、「これは本気で信頼できるプロダクトかもしれない」と思えるようになったのです。
Eagle AXSは、シフターとリアディレイラーが完全にワイヤレスで接続されており、シフターのクランプ部分はただのクランプで電子部品が存在しない構造です。つまり、クラッシュによる物理的な破損が、致命的な故障に直結しにくい。これが私にとっては非常に大きな安心材料でした。
さらに、シフターは市販のボタン電池で駆動し、スイッチボタン感覚でわずかな指の動作で変速でき、リアディレイラーの小型バッテリーもワンタッチで取り外してUSB充電が可能。1x12というシンプルな構成も相まって、非常にトラブルが少なく、すぐにその利便性と信頼性に惹き込まれていきました。
それ以来、私のマウンテンバイクはすべてSRAM仕様になりました。「Shimanoが同じ構造になるまでは、もうSRAM一択だ」と心に決めた瞬間でもありました。SRAM Eagle AXSの変速時の音のうるささは好きではありませんでしたが...。
T-Typeの導入:さらなる進化と課題
2023年、私はSRAMのEagle AXS Transmission(T-Type)を導入しました。このシステムは、リアディレイラーをディレイラーハンガーではなく、リアホイールのスルーアクスルに直接固定するという新しい構造を採用しており、変速性能に大きな変化をもたらしました。ディレイラーハンガーのアライメント精度に依存しない設計のおかげで、変速は極めて静かで、かつ驚くほど確実、そして堅牢。特にトレイルでの使用時にはその信頼性が際立ちます。

変速の音がほとんど聞こえないほどスムーズに切り替わり、操作に対する機械的なフィーリングよりも、「動作の完了を察知する」ような感覚が印象的でした。まさに、淡々と仕事をこなす優秀なアシスタントのような存在です。
ただし、唯一気になる点を挙げるとすれば、ボタンを操作した瞬間に即座に変速が完了するわけではなく、しっかりと一段ずつ、ワンテンポ遅れて変速が実行されるという点です。これは誤変速を防ぐ意図的な仕様なのだと理解はしていますが、ごく限られた状況下に限って感じることですが、「もう少し速く動いてほしい」と思う瞬間も確かにあります。
とはいえ、この点を除けばT-Typeは非常に優れたシステムです。シフターの操作感と変速の確実さはお気に入りで、今でもRail 9.7に採用しており、高い満足感を持って使い続けています。高いですけど...。
SRAM Eagle AXS Transmission ワイヤレス電動変速システムについての使用感はこちらのブログでもご紹介しています。
XT Di2 M8250の登場:シマノ愛、再燃
2025年6月、ついにシマノが本気を出しました。新登場のXT Di2 M8250は、シフターとリアディレイラー間を完全ワイヤレスで接続。しかも、これまで悩まされてきた“クランプ部分の電子基板”は撤廃され、構造的な弱点が見事に解消されています。「そうそう、これを待ってたんだよ!」と思わず叫びたくなる進化です。

また、小型のバッテリーはリアディレイラーに装着され、取り外して充電可能。ディレイラーハンガー不要の構造にこそなってはいませんが、衝突時の衝撃をいなす仕組みが組み込まれています。これらの特徴は、以前からシマノに期待していた理想的な仕様を上回るものであり、しかも安い! 私は再びシマノのDi2を導入することを決意しました。
シフターの操作感も、ワイヤー引きの操作感に似せていた以前のモデルより確実に良くなっています。レバーを押すような感覚ではなく、クリックするような感覚になりました。シフターをさらに押し込むことで一気多段変速(スマホアプリで段数設定可能)ができるのもシンプルで素晴らしい!さすがシマノ!
組み付けと初期設定:シンプルな導入
XT Di2 M8250の組み付けは非常にシンプルです。シフターとリアディレイラーはワイヤレスで接続されており、E-TUBEアプリを使用してスマホで簡単にペアリングが可能。配線が不要なため、ハンドル周りがすっきりとし、eバイク用ライトなど他のコンポーネントとの干渉も最小限に抑えられました。また、リアディレイラーのバッテリーはUSB-Cで充電でき、メンテナンス性も向上しています。
今回私が選んだスプロケットは9-45Tで、リアディレイラーのケージはGS(ショートケージ)仕様です。この構成により、フロントチェーンリングを小径化できるため、フロント側の地面とのクリアランスも確保しやすくなります。トレイルライドなどでは、これが意外と大きなメリットになります。

とはいえ、今回このシステムを組み込んだバイクは、街乗り仕様にカスタムしているハードテールのeMTB「Powerfly」。正直なところ、地面とのクリアランスが広がった恩恵を実感するシーンは、あまりなさそうです(笑)。
使用感レビュー:精密な変速と直感的な操作性
XT Di2 M8250の変速はとにかく速い! だけでなく、電動ならではの圧倒的な精度と安定感を備えています。シフトボタンを押すと、即座にリアディレイラーが反応しギアが切り替わります。それはもう本当に「即座に」という表現がぴったりです。T-Typeでは味わえないクイックなレスポンスを実現しています。また、どんな状況でも「カチッ」と決まる感覚があり、荒れたトレイルでも変速が鈍らなそうで期待度大です。
新しいシフターもかなり秀逸です。ケーブルタイプの変速機からのアップグレードであれば、こんなにいいシフターはありません! 昔のDi2より格段に電動らしいタッチでありながら、しっかりとしたフィードバックがあります。素材もかなりグリップ力があるのも好感が持てます。
Shimanoのスイッチはシフトアップとダウンが別々の位置にあるため、SRAM AXS PODに慣れてしまっている私は、久しぶりのラピッドファイヤーなのでやや戸惑いましたが、誤操作しづらい印象、かなりいい感じです。そして多段一気変速の速度と確実度は期待以上です。
また、配線不要のワイヤレス設計により、ハンドル周りの整理がしやすくなり、トレイルライドでのストレスも軽減されました。リアディレイラーのバッテリーはUSB-Cで充電でき、1回の充電で数ヶ月は持つとされています。シフターはボタン電池(CR1632)で駆動し、長期間の使用が可能です。I-spec EVのポジション調整域の広さも嬉しいところです。
SRAMとの比較:それぞれの特徴と選択肢
あくまでも個人的な感想です!
特徴 | SRAM GX AXS | SRAM T-Type | Shimano Di2 M8250 |
---|---|---|---|
通信方式 | フルワイヤレス | フルワイヤレス | フルワイヤレス |
バッテリー | 着脱式(AXS Battery) | 着脱式(AXS Battery) | 着脱式(Di2 Battery USB-C) |
シフター設計 | クランプ部は非電子的(Matchmaker対応) | クランプ部は非電子的(Matchmaker対応) | クランプ部は非電子的(I-SPEC EV対応) |
操作感 | シンプル、明確なクリック感 | シンプル、明確なクリック感 | ラピッドファイヤとほぼ同じ操作方法で軽く、明確なクリック感 |
変速スピード | 速い | ゆっくり確実 | 押した瞬間に変わる |
静音性 | 普通〜ややうるさい | 非常に静か | 静か〜普通 |
マルチシフト対応 | ◎(SRAM AXS アプリで設定変更可能) | ◎(SRAM AXS アプリで設定変更可能) | ◎(E-TUBEアプリで設定変更可) |
メンテナンス性 | 非常に高い(配線不要) | 非常に高い(配線不要) | 非常に高い(配線不要) |
美観・取り回し | すっきり、トラディショナルなフレームにも最適 | UDH対応フレームのみ | すっきり、トラディショナルなフレームにも最適 |
カスタマイズ性 | ◎(SRAM AXS アプリ) | ◎(SRAM AXS アプリ) | ◎(E-TUBE) |
総合印象 | 実用的で信頼できる | タフで無骨、レース向け | 精密で滑らか、万能型 |
コスパ | △ | X(結構高価...) | ◎(XTクラスでもコスパ最強) |
総評:再びShimanoを選んだことに、後悔はひとつもない
私は、一度はDi2に失望し、SRAMに心変わりしました。GX Eagle AXS、そしてT-Typeと乗り継ぎながら、「もうシマノには戻ることはないだろう」とすら思っていた時期もありました。でも、その確信はXT M8250 Di2の登場によって見事に覆されました。
SRAMの変速システムは確かに素晴らしいです。AXSのワイヤレス設計は画期的でしたし、T-Typeのタフで一貫した動作は、まさに“鉄壁”と呼ぶにふさわしいものでした。静かで確実な変速性能、リアエンド直結の堅牢な構造、どれをとっても納得のいく完成度でした。
ただ、価格面ではやはりハードルが高く、すべてのバイクに導入するにはコスト面の負担も無視できません。その一方で新しいShimanoのDi2は、よりリーズナブルな価格帯でありながら、シマノらしい精密で洗練された変速体験をしっかりと提供してくれるのです。
振り返れば、SRAMに“浮気”したからこそ、SRAMの良さもきちんと理解できましたし、それを踏まえたうえで「長年沈黙してきたShimanoがようやくすごくいいものを作ってくれた」と思わせてくれたXT Di2には、正直感動すら覚えました。
XT Di2には、他のどのシステムにもない“シマノらしさ”があります。
- スムーズで即応性があり、変速音も極めて静か
- 自分の意図とギアがシームレスにリンクするような直感的な操作感
- ワイヤレス化によって、組み付けやメンテナンスの自由度が大幅に向上
- クランプ部に電子回路を持たない安心感あるシフター設計
- E-TUBEアプリによる変速挙動のカスタマイズ性の高さ
「SRAMは気になるけど、ちょっと手が届かない」そう思っている方にとっても、Shimano Di2は極めて魅力的な選択肢になると思います。そしてなにより、コスパだけでなく、“感覚的な心地よさ”の点でも、Shimano Di2は間違いなく新たな次元に到達していると感じました。
すでに今シマノの12速MTBコンポを使っていれば、リアメカ、シフター、バッテリー、充電器、クイックリンクのdi2キットを購入するだけで導入できます。間違いなく今年一番のおすすめカスタムです。今回のDi2は「ちゃんと期待以上」です。
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