3年乗り倒したスタッフによる‟エモンダSLR”インプレッション
“削ぎ落とす”という意味のフランス語の語源をもつエモンダは、その名の通りあらゆる無駄をそぎ落とした超軽量ロードバイクです。トレックが持つ技術を最大限に活かしたエモンダSLRを今更ながらインプレッション。ちょっと長くはなりますが、更なる軽量化のポイントやその結果の重量もあわせてご紹介します!
実走!超軽量エモンダSLRの実力!!
エモンダSLRに乗ること早3年。それまでは現行の1世代前までのマドンシリーズを乗り継いできました。当時のマドンの上位グレードといえば、トレックのロードバイクとしては唯一無二のモデルで、軽く、速く、衝撃吸収もする・・・と、3拍子揃ったフレームでした。 現在では軽さ=エモンダ、速さ=マドン、衝撃吸収能力=ドマーネという図式で、それぞれの能力を特化させています。当時のマドンから買い替えるにあたって選んだのは軽量なエモンダ。なにせエアロやらギミックやらが技術的になかった時代から自転車を始めたので、絵的にシンプルなものに目が慣れていたということもあります。 そしてなにより“軽量”。もはや魔法の言葉で、迷いはありませんでした。 バイクプラス三郷店付近はほぼ平地で、普段のライディングはもっぱら平地の街中やサイクリングロード。乗り始めに体感したのは漕ぎ出しの軽さです。踏み込んだ時に起こるフレームのたわみが少なく、気持ちよくサクサク進みます。フレームの軽さと剛性感が平地でも活きてきます。 100km、200kmのライディングではフレームの硬さがアダになるので、タイヤサイズを25Cなどにしてクッション性を持たせました。ハンドリングは極めてナチュラル。一部ヨーロッパブランドのバイクだと、コーナーリング中にある一定の角度から途端に切れ込む設計のモデルがあります。慣れればいいだけのことですが、エモンダは慣れずともクセがなく技量を問われないので安心して走ることができます。 個人的にはトレックのロードバイクの中ではエモンダシリーズが最もクセがなく、重心のバランスも自分に合っているので好みです。
筑波山でインプレッション
後半の勾配25%はシッティングでゴリゴリ踏んでいきます。辛くなってきたあたりでダンシングにするとあら不思議。踏むというより、ペダルに体重を載せるだけでも進みます。どちらかというとペダルを引き上げる動作がメインになるイメージです。 長距離ライドではひたすら平地を走ってからのヒルクライムということも少なくありません。体力が落ちてきたあたりからも軽量化の恩恵が受けられます。距離のあるヒルクライムでは座って踏み込む、立って引き上げるという動作を交互にすることで使う筋肉も入れ替わり、疲労が一部の筋肉に集中することを防いでくれます。 登りがあれば下りもヒルクライムの付き物です。過去に16本スポークのホイールで下りを走っている最中に、スピードウォブル(前輪が左右に振れ出す)が起こり転倒しそうになったことがあります。原因としてはフォークやホイール剛性の不足ともいわれる現象で、一時期下り恐怖症になりました。 が、エモンダSLR&アイオロスXXXホイールの組み合わせならば問題なし!その軽さゆえにうまく体重をかけていく必要はありますが、しっかりと支えてくれている感があるので安心です。
エモンダSLRインプレ@江戸川
平地のストップ&ゴーでも能力を発揮してくれます。ヒルクライム用のスペックではさすがに高速巡行というわけにはいきませんが、そもそもの車重が軽いので多少の荷物を積んでも重さは感じにくくなります。江戸川などの川沿いでは坂もないのでディープリムホイールに交換して走るのも気持ちがよさそうです。高速巡行でグイグイ踏んでもたわみが少なく快適です。 ロングライドやツーリングではバックパックやシートパックによって、立ち漕ぎなど身体をアクティブに動かしにくくなるとこがあります。そんな時にも座ったままでのコントロールがしやすく、車体の軽さが活きてきます。
ロングライドやツーリングでも
単純に反応がいいのもメリットです。フワッフワの乗り心地も“快適”ですが、スポーツとして身体を動かしたときにダイレクトな反応があることも“快適”だったりします。 乗り心地以前にペダルを踏んだ感触が柔らかいだけだと、実はパワーロスが発生します。アスリートやプロ選手でなくともパワーロスは防ぎたいものです。比べてそもそものパワーも少ないので、無駄なく効率よく走りたいですよね。特に街中などの一般道の移動では急停車急発進などを繰り返すこともあります。フレームがしっかりとしていることでロスも減り、快適にサイクリングを楽しめます。ちなみに軽いので輪行も楽ちんです。 電車も船も飛行機も!! 絶対ハマる輪行サイクリングの世界
エモンダSLR ヒルクライムレースでどう使う?
今では日本各地で開催されているヒルクライムイベント。一年の照準をヒルクライムイベントに合わせている方もいるのではないでしょうか。体力、脚質などなど個人差はありますが、コースの特徴に違いのあるイベントを選んでみました。
mt.富士ヒルクライム
THEヒルクライムイベントのmt.富士ヒルクライム。スタートから1合目までが一番標高を稼ぐ区間なので、とにかく車体は軽いに越したことはないです。が、中盤はやや勾配が緩くなるので、そこをタイム短縮とするのであればカーボンディープリムホイールがオススメです。35~50mmハイトが使い勝手のいいサイズでしょうか。ボントレガーのアイオロスならば、チューブラーバージョンの50mmハイトで1,238gと軽量なので不足なしです。ただ、ヒルクライムとしては長丁場の24kmなので、1gでも軽量化しておきたい場合には体力温存のためにもアイオロスXXXがいいでしょう。
ハルヒル
最近人気のヒルクライムイベントといえばハルヒルこと榛名山ヒルクライムin高崎。全長最大14.6kmと他のイベントに比べては距離が短いのが特徴です。短いがゆえに序盤の街中ではハイスピードになるので35~50mmハイトホイールなどがいいでしょう。後半の勾配14%は誰しも失速が予想されるので、前半でタイムを狙いましょう。
まえばし赤城山ヒルクライム
極端な勾配はないものの、ひたすら踏み続ける修行のようなコースのまえばし赤城山ヒルクライム大会。個人差はもちろんありますが、緩急がないので休み所がなく淡々と走る必要があります。持久力が試されますが、機材の軽さに助けられる部分が多いとすると、ここはやはりアイオロスXXXで!! -ヒルクライム-人気の大会&イベントまとめ
エモンダSLRは何に向いてる?
ズバリ!ヒルクライム!!足回りの剛性感といい、軽さといい、これほどヒルクライムに向いている車体はないような気がします。ただし、レースやロングライドの際にはオールラウンドな能力が必要だったりもします。平地の加速あり、ヒルクライムあり、ダウンヒルありと、様々な地形が走っている間に現れます。そこに対応させるにはホイールなどの選択によってカバーしていく必要がありますが、THEロードバイク的な設計のエモンダであれば万能にこなせます。 剛性感と軽さによって、装備するスペックの能力を最大限発揮してくれるフレームです。レースを観て憧れて・・・サイクリングロードで気持ちよさそうだったから・・・などと、始めたいけれど目的はまだ決まっていないというような状況でもエモンダであれば大丈夫。装備したパーツの機能や能力を体感しやすいので、乗っていく中で自分好みの一台に仕上げていくことができます。 ヒルクライムを克服&攻略! ロードバイクでの登り坂の走り方のコツ
エモンダSLRはプロジェクトワンでオーダー
カタログ上でエモンダSLRの完成車販売モデルはなく、全てカスタムオーダーシステムのプロジェクトワンによって手に入れることとができます。
プロジェクトワンでカラーオーダー
プロジェクトワンのカラーオーダーは、数パターンの中からデザインを選び、さらにカラーを選んでいくという流れ。ここぞとばかりにド派手なカラーリングにするもよし、飽きのこない落ち着いたカラーリングにするもよしです。色彩感覚に自信のないワタクシ最上は、数万通りといわれるパターンの中からあえてのシルバーをチョイス。
プロジェクトワンはパーツサイズも選択可能!
サイズフィッティングを行うスタッフ側からすると、プロジェクトワンのメリットはパーツ選択ができることにあったりもします。パーツグレードの選択もそうですが、幅や長さ、ギア数なども選べるので無駄なく完成車を購入できます。
プロジェクトワンでオリジナルのエモンダSLRが完成!!
オリジナルバイクなのにも関わらずなんともシンプルな見た目ですが、飽きが来ないという点ではこのデザインに勝るものもないでしょう。正確には全てプロジェクトワンで揃えたわけではないですが、コンポーネントはシマノのデュラエース機械式、その他パーツはこの時点で手に入る最も軽いパーツをできるだけ投入しました。ちなみにフレームは単体重量で700gを切っています。数多くあるブランドの中でも体重制限などの制約なく700gを切っているのは希少でしょう。 TREK カスタムオーダープログラム『プロジェクトワン』とは?
軽量パーツその壱:ステム一体型ハンドル
フレームはトレック史上最軽量を手に入れ、構成パーツを吟味します。まずはハンドルから。軽量パーツといえばやはりカーボンで、さらにステム一体型のハンドルをトレックが作るとおよそ220gほど。通常は軽くともハンドルとステムのそれぞれが200gくらいで、合わせて400gは越えてしまうパーツです。ボントレガーのXXXバーステムはデザイン性も高く、軽量化の名目でなくとも導入したい一品です。
軽量パーツその弐:フルカーボンサドル
パッドや表皮をあんこと皮などと表現したりもしますが、そういったものは一切排除し軽量化を果たしたサドルです。乗り心地は・・・それなりですが、股下の圧迫を防ぎ後方に向かって反りあがった形状はフィット感が高く作られています。こちらも軽くとも100g以上はするところ、なんと68g!!!XXXカーボンサドルはトレック独自技術のOCLVカーボンなので体重制限はなく強度もバッチリ!
軽量パーツその参:チューブラーカーボンホイール
軽量化といったら忘れてはいけないホイール。車体の大部分を占めるだけあって軽量化の効果は絶大です。1,500gを切るあたりで軽量ホイールといわれるので、976gのアイオロスXXXホイールはもはや異次元の軽さです。走り出しの漕ぎの軽さはもちろん、勾配のキツい坂道もグイグイいけます。エアロホイール全盛のこの時代に、あえてヒルクライム用として投入しておきたいところです。 アイオロスXXXホイールのインプレブログはこちら⇒たった976gの『アイオロス XXX チューブラー』で裏筑波を走ってみた
軽量パーツその四:ダイレクトマウントブレーキ
ここからは“気持ち”の世界に突入します。コンポーネントを揃えた場合、シマノ・デュラエースの重量は295g。ボントレガーのスピードストップブレーキは232g・・・。わずか63g差ですが、軽量といえば軽量。機能や性能を犠牲にすることなくできる軽量化はこのくらいでしょうか。