太いチューブレスタイヤがアツい!
"ふといタイヤがお好き?結構。ではますます好きになりますよ。"
気づけば自転車パーツを買っているみなさま、ごきげんよう。所沢店樋口です。突然ですがスポーツバイクの大事な要素って何でしょう?
かるいこと?はやいこと?それともかっこいいこと?
どれもとっても大事なことですが「楽に、速く、遠くまで」いけること。これはどんなジャンルのバイクであれそれなりに大事なことだと思っています。レースであれサイクリングであれ、必要以上に消耗しながら走るのは楽しくありませんからね。
今回は「楽に、速く、遠くまで」いくための僕のオススメカスタムパーツ、タイヤについて語ります。自転車が唯一地面に推進力を伝える事が出来る大事なパーツ、これなくして成り立たないのがタイヤです。
執筆時のEmonda ALR5
タイヤ銘柄をお勧めする前にまずは伝えたいことを書き記してからにします。結論から申し上げますと"細くて空気圧が高いタイヤが最強!"というのはだいぶ過去の話です。平成の世では一般的な考えでした。令和最新版は"太くて空気圧が低いタイヤが最強!"(限度はある)と感じます。
細いタイヤが流行っていた理由
細いタイヤが速いという話はシチュエーションが極めて限られます。しかし当時は “軽く、細く、接地面積が小さい高圧タイヤ“ を使うのは当たり前でした。競輪場の路面のように磨き上げられ砂利一つない環境の場合は、細く空気圧の高いタイヤであるほど路面接地面積が減りスムースに走ります。
では実際の路面はどうでしょうか?ライドをしていて気持ちがいい程路面がキレイな場所は走行時間の数パーセントにも満たないと思います。ここ所沢はつるつるとは程遠い凸凹具合です。優しいきれいな路面 ずっとこうであってほしい
それぞれの路面に硬いタイヤと柔らかいタイヤを転がしたら違いはどうなるでしょうか?硬いタイヤは地面の凹凸に合わせてガタガタと振動して跳ねてしまいますが、やわらかいタイヤはそのしなやかな元に戻ろうとする力で打ち消してくれます。振動や衝撃は人体に伝わり続けると疲労やストレスとして現れます。自転車のエンジンは人体そのもの。エンジンが無駄に消耗する走り方ではあまりにももったいない。ひどく荒れた所沢の厳しい路面 とてもつらい
どうでしょう?そうです。スペック上軽くて速いはずだった細くて硬いタイヤより太めで柔らかいタイヤの方が疲労せずに最後まで走ることが出来るのです。それどころか硬いタイヤだとはねてしまうような凹凸のあるシチュエーションにおいても速く走れる太めのタイヤは、快適性/速さにおいても最強格といえます。限られた環境での瞬間最大風速よりもアベレージヒッターを目指していきたいなら断然太めです。人生もこうありたい…。
太リムに太タイヤがアツい
以前より太くしなやかになったタイヤは変形できる量が多くなっています。硬く細かった時のタイヤは、ゴムのコンパウンド素材などを工夫することでグリップを稼いでいました。一方、体重に対して適切な圧で運用ができるようになった太いタイヤは、変形することでグリップを稼げるようになっています。今までよりも路面の凹凸に合わせた変形でグリップを稼ぎ、コーナリングの安定感や路面へのトラクションの伝達効率が向上します(コンパウンドはもちろんですが)。
適切な圧は振動や衝撃を減衰するのはもちろんのことながら、コーナリングでのコントロール性や疲労の軽減など得られるものが多いです。路面のうねりやヒビなどにも追従してくれるため、神経質に路面を気にしすぎる必要がありません!細タイヤでロングライドをしていると結構神経使うんですよね。おっと、太いタイヤは走行だけでなくメンタル面も支えてくれるとは。エアボリュームも器もでかいですね。
欲するは空気量
可視化できる部分を代表して"太いタイヤ"という書き方をしてきましたが、タイヤが太いことによるエアーボリュームの大きさが大事です。
タイヤが太いと中に入る空気の量が多いですので、空気圧を上げなくともほしいタイヤの張り(硬さ)が得られます。エアボリュームを多く保てると自分の求めた空気圧量で調整が効くのでポジティブな空気圧セッティングができます。細いタイヤは空気を保てる体積が少ない為欲しい張り以上に空気圧を入れる必要があったり、低圧ではリム打ちをし易かったりとネガティブ面が目立ちます。
TREK1200に15cゾンダ 23c 4seasonタイヤの図
私も以前は15cリムに23cタイヤ、カチカチの7-8Barで運用していました。キレイ目な路面で加速していくときの "疾走している感" は非常に気持ちの良い物でした。半面、ロングライドした時の疲労感は結構なものでした。体力的にも、路面を常に凝視しなければいけないメンタル面もゴリゴリと削れていきました。今思うとよくやっていたなと思いますが、当時はそれが良しとされる業界の中で、かつそれしか選択肢のない環境だった為できることが限られました。
最大25c程度という制約の中で快適性を上げるにはタイヤのTPI値が高くしなやかなものを使ったり、ラテックスチューブを使ったりと様々な工夫をしていました。写真の1200にはラテックスチューブをインストールしています。
太いと重いし抵抗が大きくなるのでは?
GOODYEAR EAGLE F1 SSR 30c x AEOLUS RSL51 (インナーリム幅23mm) タイヤ幅実測32mm
太いと重い、タイヤはなるべく軽い方がよい。リムブレーキ主流時代はその考えが主流でした。細いタイヤは確かに重量が軽いですが、前述したとおり万能なわけではないです。例えば30cと19cだと確かに19cが軽いですが、振動の減衰性やグリップの観点において19c側で自分の条件に理想的な空気圧を充填するのはかなり難しいです。30cは確かに19cよりも重くなりますが体重やシチュエーションに合わせて空気圧をセッティング出来る幅が広いというのが利点になってきます。
細いタイヤですと空気圧を低めにしようにも限度があります。欲しい柔らかさにセッティングすると規定値を下回ったり、段差でリム打ちをし易くなってしまいます。そのため、カタログスペック上の重量のみをにらめっこするのも考え物です。
完成車付属のようなタイヤは太いけれど厚いため硬く、チューブも厚くパンクしにくいようにセットされています。そのため乗り心地や軽快さはさほど高くありません。例えばドマーネALにお乗りでアップデートを考えられている方の場合。R1 32cクリンチャーの構成を細く軽くしたいとご相談をよくお受けしますが、お勧めは「太さを替えずにタイヤのグレードを上げる」です。完成車のタイヤの太さはその車種のコンセプトをなぞった仕様になっていることが多いので、太さを変えることで軽くしようとするのはちょっと時期尚早です。まずは同じサイズのタイヤでグレードを上げてみて下さい。同じ太さという条件だと、しなやかさや転がりの良さをしっかりと比べる事が出来るはずです。
では太さの恩恵を最大限授かるには?そう チューブレス化です。
チューブレス化のメリット
クリンチャーに慣れ親しんでいらっしゃる方にとっては「めんどくさそう…」「クリンチャーから変えるほどのメリットがあるのかな」等思うところはいろいろあると思います。ひとまずチューブレスの良さについて軽く触れてみます!
車輪の軽量化
チューブを使用しないため車輪の軽量化が可能です。太いタイヤの場合はとくに効果的です。
耐パンク性能のアップ
小さな穴であればシーラントが素早く穴を塞いで空気の漏れを防いでくれます。チューブがない分リム打ちパンクがほぼ発生しないのでチューブを使用していた時よりもさらに低圧で使用できるようになります。
タイヤ性能のアップ
チューブを使用しないためタイヤ変形時のエネルギーロスが軽減。チューブドタイヤと同じ空気圧で比較した場合は転がり抵抗が低い(路面抵抗が軽減)、そのおかげで乗り心地もグリップも向上。路面状況をダイレクトにキャッチできるから感覚もつかみやすく操作性に優れます。走る場所やライダーの体格に合わせて圧を低くすれば、地面に吸い付くような、それでいてしなやかな感じが味わえます。
引用元 「チューブレス化のメリットとチューブレスレディタイヤをシーラント液でチューブレス化する方法」
では空気圧はいくつ入れたらよいのか
これだけ「空気圧を低く」と言ってきましたが、明確な圧には触れてきませんでした。これに関しては乗る人と構成によって変わってきます。…ああおっしゃらないで。人によって違う、なんてふわついた言葉でごまかす気はありません。タイヤの空気圧は大きく以下の要素で決まってきます。
・ライダー体重
・走る環境
・バイク重量
・車輪径
・タイヤ幅
・インナーリム幅
・タイヤTPI(しなやかさ)
などなど。「こんなに要素あったら結局圧なんかわかんないよ~!」となると思いますが安心してください。今回ご紹介するタイヤにはこんな便利な計算サイトが御座います。じゃん。
グッドイヤー タイヤプレッシャーガイド
これを使えば自分にピッタリの空気圧を探す近道が出来ます。僕の車体を例に見ていきましょう。
体重や使い方などを事細かに入力して出される空気圧
僕のデータはこんな感じです。Eagle f1 SSR30cでインナーリム幅23mm。メインの使用環境はロードです。車体重量は7.8㎏程ですが荷物を積むため10㎏で計算しています。僕の使用環境ですとF3.75bar R3.99barとなりました。クリンチャー常用の方からするとびっくりな低圧じゃないでしょうか。TLRタイヤは低圧でもチューブとずれたりリム打ちしない、太いリムでタイヤをしっかりと支えてくれる為低圧で成り立つのです。
___数字だけにとらわれてはいけない…!
何度見ても作りが良いタイヤ
GoodyearのロードTLRには明確な最低空気圧がありません。これは先述の"乗る人と構成によって変わる"為です。基本はグッドイヤーのプレッシャーガイドを参考にセッティングし、好みで加減圧するのがセオリーです。推奨空気圧より大幅に下回る場合は底付きなどのトラブルやタイヤの劣化などを招くと考えてみるとよいでしょう。ちなみに僕の冬設定はF3.0bar R3.5barほどに落ち着きました。気温が上がってくるとまた変わってくると思います。自分好みにセッティングできるのは楽しいですね。
柵(しがらみ)から解き放たれたタイヤ
2016 Madone9 フロントビュー
ちょっと話がそれますが、DISCブレーキ化をしたことでタイヤ周りからブレーキキャリパーが撤廃されました。今までキャリパーブレーキという制限で25、行けて28cあたりがMAXでした。高性能なリムキャリパーブレーキが規格化されていたがために、エアロロードであろうがエンデュランスロードであろうが最大タイヤサイズは基本一緒でした。
今はといいますとドマーネは32c エモンダは28c チェックポイントは40cなどと車体による最適化がされています。これだけで一昔前とはだいぶ違います。ディスクブレーキ化に伴ってブレーキキャリパーによるタイヤサイズ制限が撤廃されました!これは個人的にディスクブレーキ化した一番の恩恵だと感じています。フレームをどんなにしなやかに作り上げたとて、タイヤが硬かったらそこまで効果的とは言えないですからね。
2023 Domane SL5 フロントビュー 現状32c 最大38c
2024 Emonda SL5 フロントビュー 現状28c 最大30c
2024 Checkpoint SL5 フロントビュー 現状40c 最大45c
タイヤサイズでバイクのキャラクター付けが出来るようになった昨今。リムブレーキ一辺倒の時代に比べると、以前に増してタイヤが主人公格になってきました。選ぶタイヤ次第で方向性を大きく変える事が出来ますので、シチュエーションによって構成をカスタマイズしてあげるのも楽しい遊び方だと思います。
今お勧めのTLRタイヤ
・GOODYEAR EAGLE F1 Super Sport R
今回セレクトしたタイヤはこれです。びっくりするほど作りが丁寧で良く走るタイヤです。思っていた数段上を行ったので一杯食わされた感じです。
グッドイヤーのロードタイヤは2020年ごろに上陸したまだ日の浅いシリーズです。 僕は前作のCLタイヤが出た当時、クリンチャータイヤ黄金期だったのもあり手を出しませんでした(ほかに愛用タイヤがあった)。今回タイヤを交換しようとしていた矢先にフカヤの営業さんが新商品のEAGLEシリーズを持ってきてくださいました。
惚れそうなほど奇麗なビード面 好き、、、
手に取り驚いたのはそのしなやかさ、ビード面の精度の高さ。日頃いろいろなTLRタイヤを触らせてもらっている僕らですが、他の製品とは一線を画す精度に一同驚きました。チューブレスはホイールのハンプ面とパッキンのように密閉をする仕様上、ここの精度が低いと空気漏れやビード落ちに直結します。ホイールにはめて回転させてみてもトレッド面がうねることはありません。これは期待大!早速カータイヤとしても名高い"EAGLE F1 Super Sport R"を購入しました。
TLR 30c 公称値275g 実測270g カタログスペックと大きな乖離無し
自分の為だけのレッドカーペットが敷かれたよう
まず驚いたのはその抵抗の無さ。柔らかくもヨレないタイヤが確実に路面をとらえてくれるのでトラクションロスが少なく気持ちのいい程に転がってくれます。軽快な回転から一気に加速をすると出したい速度がそのまま出ていきます。大抵のタイヤはパワーをかけていくとそれなりに抵抗感が出てくるものですが、このタイヤはそれをほぼ感じません。思い通りにバイクを転がせる楽しさを十二分に味わうことができます。
自分に適した低圧で空気を入れられている(後述)というのも大きいかもしれません。
特にSuper Sport Rは150TPIと非常にしなやかなつくりに加え、対パンクベルトが撤廃されていているのも大きいと思います。
いうなればレッドカーペットの上を走っているよう。最高です。
タイヤそれぞれ 空気圧それぞれ
"ワイドリム プラス ワイドタイヤ この条件にあらずんばロードタイヤにあらずだ"
楽に、速く、遠くまで行けるスポーツバイク。文字通り足元から支えてくれるのがタイヤです。タイヤは目的や使い方が変われば最適解は変わってきます。買って乗って試して、時には失敗しながら最高の体験を見つけていきましょう!
それでは皆様 良い自転車ライフを!😊